有機栽培では、どのような堆肥や肥料を使いますか?
2022.2.7
有機栽培で作る野菜や果物などと同じく、畜産でも有機JASによって基準が定められています。この記事では、オーガニック卵は一般的な卵とどのように違うのかを、オーガニック畜産の有機JAS基準と契約農場の事例に沿って、ご紹介します。
目次
■非常に厳しいオーガニック畜産の基準
・餌について
・飼育環境について
・飼育方法(健康管理)
■一般の卵とオーガニック卵の価格の違いについて
■黒富士農場(山梨県)のオーガニック卵
■日本ではまだまだ希少なオーガニック卵
オーガニック(有機)畜産では、餌、暮らす場所、飼育方法、全てにおいて厳しい基準が定められています。有機畜産物の日本農林規格(有機JAS)第2条では、下記のように記載されています。
有機畜産物は、農業の自然循環機能の維持増進を図るため、環境への負荷をできる限り低減して生産された飼料を給与すること及び動物用医薬品の使用を避けることを基本として、動物の生理学的及び行動学的要求に配慮して飼養すること又はこれらの家畜若しくは家きんから生産することとする。
有機畜産はヨーロッパで生まれた考え方で、薬剤に頼らず、有機栽培された飼料を与え、密飼いなどのストレスを与えずに、家畜の行動要求に沿って育てられる飼育方法です。家畜に不必要な苦痛を与えず良い生活を保障しようとする、アニマルウェルフェア(家畜福祉)の考え方に基づいています。
それでは、オーがニック畜産の養鶏について、細かく紹介していきます。
餌は主に有機の畜産用飼料を与えることと、決められています。有機飼料の原材料は、化学肥料,化学合成農薬や遺伝子組換え作物などを使用しない有機栽培されたものです。
出典:有機JAS有機畜産物の日本農林規格(第4条飼料の給与)
鶏の餌は、大豆ととうもろこしが一般的です。日本の飼料自給率は25%と少なく、そのほとんどは、輸入に頼っています。輸入飼料は、遺伝子組み換えで作られたものや、輸送時の害虫・カビ・腐敗を防止するためのポストハーベスト農薬(収穫後農薬)が使われているケースが多くあります。安全性や残留農薬への不安もあり、そのようなものは有機栽培(有機JAS)の基準ではもちろん認められていません。そのため、有機栽培の餌(大豆やとうもろこしなど)は、とても希少です。一般の養鶏と比べると、鶏が食べる餌を用意するだけでも、一苦労なのです。
出典:農林水産省 食料自給率に関する統計数値(飼料自給率令和3年8月数値)
飼育環境に関しては、えさや水を自由に摂取できる環境で、適度な温度、湿度、通風、換気及び太陽光による明るさが保たれている飼育環境であること。野外の飼育場に関しては、使用禁止資材を使っておらず、周辺からも飛来、流入しないようにすること、などの決まりがあります。出典:有機JAS有機畜産物の日本農林規格(第4条)
一般的な鶏の飼育は、ケージで密飼いをしている場合が多くなっています。
一方、オーガニック卵の飼育環境では、鶏がのびのびと動き回れる平飼いで育てられています。
野外の飼育場にも自由に出入りできるようにすることが義務付けられているため、羽を広げて走り回り、砂浴びをして、止まり木で休憩するといった、鶏本来の行動欲求を大切にしています。鶏のストレスや疾病を予防することを重要視したやさしい飼育方法です。
鶏の健康管理においても、基準があります。
飼料以外の、成長又は生産の促進を目的とした物質を給与しないことや、動物用医薬品は使用しないこと、などと定められています。出典:有機JAS有機畜産物の日本農林規格引用(第4条 健康管理)
つまり、成長促進を目的としたホルモン剤や、病気の予防を目的とした抗生物質などの薬剤投与は禁止されています。疾病などの病気になった場合に、治療を目的として抗生物質を使う場合はありますが、疾病になっていない段階で抗生物質を使い続けることは、耐性菌の増殖などの問題があります。
オーガニック畜産の飼育では、先ほど紹介したような飼育環境で育てることで、鶏たちのストレスを低減させ、抗生物質などの薬剤を使わず、健康な鶏を育てています。
一般の卵とオーガニック卵の大きな違いとして、価格の差があります。一般の卵の約4倍以上高価な有機卵ですが、価格にこれだけの差があるのは、先ほど紹介した餌、飼育方法が大きく影響しています。
一般的な養鶏では、工場で大量生産によって作られた餌を使っている場合が多く、餌のコストは安く抑えることができます。
有機卵の場合、有機の原料を専用の飼料ラインにて少量生産している為、そこでもコストが大幅にアップします。また一部は自家配合で餌をつくっているため、一般の卵に比べ、コストがかかってしまいます。
一般的にケージ飼いで飼育されている場合は、狭い空間で何羽もの鶏を育てています。それにより平飼いに比べると、多くの鶏を育てることができ、生産性があがります。また、ケージ飼いのストレスなどによる病気を予防するため、抗生物質などを定期的に使い、安定して卵を出荷できるようにしている場合もあります。
一方、オーガニック卵の平飼いの場合は、1羽あたりの鶏の飼育面積が決められており、密飼いができないため、多くの鶏を育てることが難しくなります。また、野外の飼育場などでのびのび過ごすことが出来る分、気温や天候などの影響を受け、産卵率が低下することもあります。生産性が下がる分、一つ一つの卵が希少で、価格の上昇にもつながっています。
ビオ・マルシェが契約している、黒富士農場(山梨県)。現在、ビオ・マルシェにオーガニック卵を出荷いただいている、唯一の生産者です。こちらの事例を踏まえながら、実際の飼育の様子やこだわりを紹介します。
餌の主原料である大豆・トウモロコシは、有機JAS基準に沿って、非遺伝子組み換え種子を用いた飼料を使います。黒富士農場のスタッフも、仕入れ先の畑に年に1度有機JAS審査員と訪れ、作物の確認をしています。
また、黒富士農場では、自家配合の飼料も与えています。日本が長寿国である大きな要因としてよく挙げられるのが、健康的な食生活です。「米と味噌汁、漬物」という日本の朝食に近い原料を用いて、発酵飼料を自家配合し、鶏たちに与えています。
人と同様に、腸から元気に健康な体づくりを目指しています。具体的には、食の安全性にこだわった地元生協の豆腐から、廃材(未使用資源)である「おから」と「米ぬか」を主原料にして、その他は鶏の体調に応じて「海藻粉末」「アオサ」「魚粉」「餡殻」「かき殻」「ニンニク」などを使っています。
卵にとって水はとても大切で、卵白に至っては、約89%が水分と言われています。黒富士農場は、山梨県は甲斐市、標高1,100mの山懐に位置しています。この場所を選んだ理由の一つが、天然湧き水です。黒富士農場の上流から流れるミネラル豊富な湧水が、黒富士農場の卵のおいしさにつながっています。山々に囲まれた自然豊かな場所は、夏でも非常に涼しく、鶏たちにとっても過ごしやすい環境です。
黒富士農場では、「平飼い放牧」での飼育をしています。鶏たちはいっせいに外へ。のんびりと牧草を食べては走り回り、疲れたら座ってひと休み。給餌器が回り始めると、餌を食べるためにいったん鶏舎に。お腹いっぱい食べたら、再び外を駆け回ります。気が済むまで遊んだら、夕方には鶏舎の中へ戻ります。黒富士農場の鶏たちは、のびのびと元気な毎日を送っています。
放牧場、鶏舎内の土づくりは有機農法で行われています。
B=バクテリア M=ミネラル W=ウォーターの略である、BMW技術で作ったBM活性堆肥を鶏舎内の床下に敷き込み、土代わりに活用して鶏舎内&鶏の飼育環境改善に役立てています。
BMW技術とは、岩石と腐葉土と水の力による自然浄化を基礎とする農法です。特別な菌を用いるのではなく土着の微生物の力を活性化させて農産物や家畜を内部から健康にしていくことを目的としています。このBMW技術のおかげで黒富士農場は畜産独特の臭いが殆どしません。ハエなどの発生を防ぎ、清潔な飼育環境を維持しています。
今回はオーガニック(有機)卵について紹介しましたが、一般的に飼育されているものと比べ、厳しい基準であることが分かります。とてもこだわりを持って大切に育てられています。
アニマルウェルフェアについては、家畜を快適な環境下で飼育することにより、ストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながっていきます。
ビオ・マルシェでは、オーガニック卵以外にも平飼い卵を取り扱っています。有機JAS認証は取得していないですが、ビオ・マルシェ独自の畜産取り扱い基準をクリアしています。
ポストハーベスト農薬を使用せず、遺伝子組換えではない飼料を与えられたもの。過度の密飼いをせず、家畜がのびのびと運動できるスペースが確保されていること。抗生物質や成長のためのホルモン剤の投与などをしていないこと。一般に販売されている卵に比べると十分厳しい取り扱い基準を定めています。
本日紹介したオーガニック(有機)卵と同じくビオ・マルシェの宅配でご購入いただけます。