年末年始のごちそうをお手軽に、ビオ・マルシェの年末・2025...
2024.11.1
1962年に設立して以来、酪農からチーズ作りまで手がける木次(きすき)乳業。奥出雲地域の豊かな大自然の中で、のびのびと育った牛の新鮮な生乳を原料乳として使っています。生乳の自然な風味、性質、栄養を残すことにこだわった、パスチャライズ牛乳を日本で先駆けて生産したことでもおなじみです。
今回は、ビオ・マルシェの収穫感謝祭「オーガニックライブ2021」(2021年11月13日開催)の中から、木次乳業によるスペシャル講座の一部をご紹介します。奥出雲地域でのびのびと育つ牛たちの様子とともに、生乳の美味しさを生かした牛乳やチーズの作り方を、佐藤 毅史 社長に教えていただきました。
(お話しいただいた代表の佐藤 毅史さん)
木次乳業の牧場は、豊かな水ときれいな空気に育まれる斐伊川(ひいかわ)流域に点在しています。今回のイベントでは、数ある牧場の中から、日登牧場と大石牧場を紹介いただきました。
日登牧場は、山間地を生かした山地酪農をしています。育てているのは、スイス原産の牛であるブラウンスイス。足腰が強く山地放牧に適しています。
(ブラウンスイスが山地でのびのび過ごす様子)
牛たちは、1日2回の搾乳の時間以外は、自由に放牧地と牛舎を行き来できます。放牧地の草を食べたり、牛舎で干し草を食べたり、思い思いにのびのびと過ごします。牧草のほか、サイレージ(牧草を発酵させたもの)や非遺伝子組み換えの穀物飼料を食べています。
(ブラウンスイスが山の中に設置された飼料を食べる様子)
健康維持の観点から、穀物飼料はなるべく少なくして、草の食物繊維を取らせています。また、耕作放棄地を利用して牧草を育て、飼料の自給にも取り組んでいます。
大石牧場では、広大な土地を利用した放牧酪農を10年前から始めています。ここでは、ホルスタインとブラウンスイスを育てています。体の大きなホルスタインは山での生活は少し苦手。体の負担が少ない平地の牧場で、自由に牛舎と放牧地を行き来しています。
(ホルスタインが牧場を走りまわる様子)
ホルスタインは、お乳がたくさん出るように改良されており、ブラウンスイスより一回り身体が大きいです(メス牛で約650~700㎏)。1日あたりの乳量は、約25~30Lです。(日登牧場のブラウンスイスは約15~20L)
(ホルスタインが牛舎の中で過ごす様子)
放牧による運動でエネルギーを消費する分、日本で一般的な繋ぎ飼い式(牛舎にある「ストール」という囲いの中に1頭ずつ牛を繋いで飼う方法)で飼育される牛と比べて、乳量は少なくなります。
しかし、放牧地で自由に過ごす方が、牛にとってストレスにならないと考え、大石牧場では、放牧酪農にこだわって飼育しています。
(種類ごとにタンクに分けられた牛乳)
パスチャライズ牛乳とは、牛乳の栄養・性質を損なわないで、病原微生物の危険性を最小にすることを目的として、65℃30分間(低温殺菌)、または72℃15秒間(高温殺菌)の熱処理を行ったものです。
一方、一般的に多く流通している牛乳は、超高温殺菌で製造されています。超高温殺菌牛乳は保存を目的としており、120~130℃・2~3秒間の熱処理で無害な細菌も含めて、全ての微生物を殺菌します。
パスチャライズ牛乳は、超高温殺菌牛乳と異なり、タンパク質が熱変性しないため、胃の中の消化酵素により固まり、お腹の中でゆっくりと消化されます。そのため、消化にやさしく、栄養吸収が効率的な点が特徴です。焦げ臭さや甘ったるさ、ネバネバ感などがなく、サラッとして飲みやすい牛乳です。
木次乳業は「できるだけ生乳の性質を残した牛乳を提供したい」と考え、日本で先駆けてパスチャライズ牛乳の製造に取り組み、1978年から販売しています。
※ホルスタインの生乳は、パスチャライズ・ノンホモ牛乳・チーズの原乳です。ブラウンスイスの生乳は山地酪農牛乳・ブラウンスイス牛乳に使用しています。
※65℃30分間(低温殺菌)のパスチャライズ牛乳は、2022年4月15日より製造を休止しております。
木次乳業では、健康に育った牛たちの生乳を使って、ナチュラルチーズを手づくりしています。良質な生乳を使っているので、熟成後の風味はとてもクリーン。不快な雑味を全く感じません。ミルクの美味しさが生きた優しい味わいです。
大手メーカーでは機械化されているところも多いですが、木次乳業は手作業にこだわります。以前に撹拌の一部を機械化したところ、味が変わってしまったとのこと。気温や生乳の微妙な変化に対応できる、手づくりだからこその美味しさがあります。
チーズは、種類によって成形方法や熟成期間などが異なります。
まずは、木次乳業の全てのナチュラルチーズに共通する工程をご紹介します。
① 生乳を72℃15秒間殺菌し、乳酸菌とレンネット(酵素)を入れて、チーズカード(豆腐状の凝固物)を作る。その後、カッティングナイフ(ピアノ線を張ったような器具)でチーズカードをさいの目に切り攪拌する。
やわらかい生乳のカード粒子が壊れると、風味が失われるため、機械ではなく手作業で行う。混ぜ方や時間は様子を見ながら判断する。
(白いかたまりがチーズカードをカットしたもの)
② カード粒子の水分を適度に抜き、チーズカードをまとめ、マットのように固める。チーズバットに満杯に入っていた生乳は、10分の1の量になる。
ここからは、ビオ・マルシェでも人気の「プロボローネチーズ」の工程です。
③ もちもちとした食感を出すため、②の生地を熱いお湯の中で伸ばしてはたたむ工程を繰り返す。生地を切って量り、手で回しながら形を丸く整えたら塩水に浸けていく。
④ 表面を燻製する。その後、ロウにつけることで外気を遮断し、乾燥とカビからチーズを守る。
⑤ 熟成庫で熟成させる。その後、一つ一つ手作業で包装して完成。
木次乳業では、数種類のナチュラルチーズを製造しています。出荷できるまでの熟成期間はナチュラルチーズによって異なります。
それぞれのナチュラルチーズの特徴と熟成期間についてご紹介します。
くせがなく、ミルクを凝縮したような味わい。細かく切って熱々の料理にかけると、糸のようによく伸び、コクも増して美味しく召し上がれます。
3週間~1か月
スモークの薫りで、そのままでも食べやすく、お子様のおやつやおつまみにもおすすめです。
4~5日
使い勝手がよく、日本人の口にも合います。そのまま食べるほか、グラタンなどのトッピングやチーズトーストにもおすすめです。
2か月
ちょっぴり大人な雰囲気、スライスしてワインなどのお酒のおつまみにおすすめです。
2か月
カビによる独特の風味が特徴。短い期間で風味が変化していくので、味わいの変化を楽しめます。胡椒やはちみつなどをかけて食べるのもおすすめです。
3週間
木次乳業の牛たちがのびのびと過ごす様子や、工場でのナチュラルチーズづくりの様子などを紹介した動画を、YouTubeで公開しています。
本記事で紹介した佐藤社長のお話しもあります。ぜひ、ご覧ください。
※ ビオ・マルシェの収穫感謝祭「オーガニックライブ2021」(2021年11月23日開催)の配信動画です。
※ ビオ・マルシェオリジナル「パスチャライズ牛乳」(製造:木次乳業)は、2022年4月16日以降、販売を休止しております。