
フレンチ一つ星・大土橋シェフ、島根県・木次乳業を訪問
2025.4.18
11月、フレンチ一つ星・大土橋シェフとともに、ビオ・マルシェの有機味噌を製造している島根県「やさか共同農場」を訪れました。
農場があるのは、島根県浜田市から車で30分ほど山間部に進んだ弥栄 (やさか) 町 。人里離れた自然豊かなこの地で、味噌などの加工品や農産物を生産しています。
代表の佐藤さんにお話をお伺いしました。やさか共同農場は、約50年前に集団でこの地に移住してきて、地元の方に味噌の作り方や農作物の育て方を教えてもらうことから始まりました。
以前は、人参やキャベツなど定番野菜を中心に有機野菜だけを30品目くらい作っていましたが、鮮度や物流コストの課題などから、有機の原料を使った加工品の製造にも力を入れるようになりました。
近年は、暑さの影響で味噌の食味は変わらないものの、色が濃くなってしまう傾向等が出ており、管理が非常に難しくなっているとのこと。原料の調達も不安定になっていて厳しい環境ですが、創業時からの「世界で2番目に美味しい味噌を作ろう!」という信念で日々取り組んでいます。(ちなみに、1番はみなさんが自分で作った手前味噌だそうです。)
農産物責任者の竹岡さんに、小松菜を栽培しているハウスをご案内いただきました。
一般的なハウス栽培では年6~7回作ることが多いそうですが、ここでは土作りを大事にする観点から、年4回にとどめています。
小松菜を作っていない期間は、土の太陽熱消毒や、枝豆など別の農作物を作ることで、土を休ませています。そうすることで、虫食いに負けない強い土ができるそうです。
小松菜は、夏は種まきから収穫まで30日程度ですが、冬は90日程度かかります。冬の小松菜はゆっくり成育する分、より美味しくなるそうです。冬の小松菜を試食した大土橋シェフ、「えぐみがなく生でも食べられますね」とのこと。
小松菜の隣には、ミニトマトやぶどう、イチゴなど様々な品種を実験的に作っているハウスがあります。遊びの要素を持ちながら栽培することも楽しみの一つだそう。ここの土もとてもふかふかで、何を作るにしてもまずは土作りが大事なのが実感できます。
続いて、有機大豆の畑。栽培を始めて2年目で、収穫作業中でした。大豆は土の栄養を良く吸収してしまうため、連作が難しいですが、今後も拡大していきたいとのことです。
次に、しいたけの収穫を見せていただきました。原木にしいたけの菌を付けると、4~5年収穫ができるそうです。しいたけは10日くらいで一気に収穫する必要があり、訪れた日はちょうど収穫のピーク。カゴいっぱいに立派なしいたけが入っていました。これらは、乾燥しいたけとして販売されるそうです。
最後に味噌の製造工場をご案内いただきました。
こちらでは、原料の米や大豆を「洗い」→「寝かせる」→「蒸す」→「麹をつける」→「発酵」という工程で味噌を製造しています。今でも大半の工程が手作業で、力仕事も多いので、ここのスタッフはみな体つきがたくましくなるそうです。
味噌はゆっくりと時間をかけて発酵させているので、大量生産はできないですが、手間ひまをかけている分、美味しい味噌ができあがります。できたての味噌を試食させてもらったら、旨味が凝縮して絶品!でした。
近年は温暖化の影響で発酵の仕方も変化しており、管理の仕方が難しくなっているそうです。
工場の近くにある施設「ふるさと体験村」内のレストラン「味里」で、佐藤さんへ今後の展望についてお話いただきました。
「今の時代、お客様はできあがった物しか目にしないことが多いですが、できれば、つくる過程まで見てもらいたいです。また、私たちは食べものを作ることはできますが、その食べ方をうまく伝えるのは得意ではないですよね。そこは、ビオ・マルシェさんや大土橋シェフを通じて、お客様へ伝えてもらえたら嬉しいです。有機農業の可能性はまだまだあると思っていて、今後はポップコーンの生産拡大や梅の栽培にも挑戦していきます。近隣住民の方はもちろん、ユニバーサル農業という形で、何らかのハンディキャップをもった方でも活躍できる場を提供したいと思っています。」
大土橋シェフも「業種が違う人たちで話をすることで、新たな可能性が生まれることはたくさんあると思う。今日の気づきを東京に持ち帰り、また一緒にできることを考えていきましょう」と締めくくられました。
やさか共同農場の農産物・加工食品を使ったレシピは近日公開予定。お楽しみに。