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和歌山県有田郡の平飼い養鶏場「蒼生舎」を訪問してきました

和歌山県有田郡の平飼い養鶏場「蒼生舎」を訪問してきました。和歌山県有田郡有田川町内を通る国道を走り、集落からさらに山の方へ進んだところに蒼生舎はあります。

向かう途中の山道には蒼生舎への行き方をしるした看板がいくつかあり、道案内をしてくれています。看板のある角を曲がり、狭く険しい道を進みます。最後に木々に囲まれた坂を登り、到着しました。

2024年11月5日、ようやく秋らしい気候になってきた頃。季節の変化を感じる時期です。到着したのはお昼の時間でしたが、木々が茂る山の中なので少しひんやりとしていて、上着がないと肌寒く感じました。

有田川町は、和歌山県のほぼ中央に位置し、東西に広い町です。有田川を中心に、豊かな自然景観が残っています。有田川町と言えば、全国的に有名な「有田みかん」の主要産地。蒼生舎へ向かう途中にオレンジ色に色づき日の光でキラキラと輝くみかん畑を通ってきました。

 

ビオ・マルシェの宅配と平飼い卵の長く深い物語

今回お話をお伺いしたのは、蒼生舎の農場長、今村直子さんです。
蒼生舎は1984年に創業、今年で41年目です。ビオ・マルシェの宅配では、40年以上お世話になっています。

人と同じ。鶏にとって心地よい環境を

手作りの鶏舎は3棟に分かれており、全部で38部屋あります。40年経った今も壊れることのない、立派な鶏舎です。今の風景からは想像も出来ませんが、40年前にここへ来た時は、背丈くらいの茅が生い茂る草原だったそうです。

鶏舎の床にはおがくずが敷かれ、木の香りがほんのり漂っていました。微生物が鶏の糞などを分解するので嫌な臭いはほとんどなく、衛生的な環境が保たれています。

「鶏も人と一緒。どんな時にしんどいか、辛いか分かる。自分がしんどい時に無理はさせられない。」今村さんが、長年養鶏をされる中で強く感じられていることだそうです。

鶏も人と一緒で、「暑さや寒さは平気」という訳ではありません。過ごしやすい気候の時は産卵率が安定します。この自然豊かで爽やかな風の吹く有田川町ですら、ここ数年の夏の暑さは厳しく、鶏たちも人と同じように夏バテしてしまいます。そこで、2年前に鶏舎の屋根を遮熱性のある塗料で塗り替えたそうです。風が通る鶏舎ですが、鶏たちの為に何か出来ないかと、今村さんの思いが込められています。

鶏舎の中では、鶏たちが自由に動き回っています。蒼生舎では風と太陽が行き渡る開放鶏舎で、平飼いで育てているので、鶏たちがのびのびと育っています。よく動き回ると健康になるのも、人と同じですね。

1部屋に118羽、そのうち3羽は雄です。雄鶏を群れの中に入れることで、鶏本来の生育環境に近づけています。平飼いの鶏は自由に動けるので、鶏の習性に沿った行動ができます。卵が産みたくなったら、鶏が自ら産卵箱に入って、安心して卵を産むことができます。

 

鶏舎は南向きに建てられていて、広い窓から太陽が差し込んでいました。3棟ある鶏舎のうち2棟は並行して建てられている為、建物の高さに高低をつけ、どちらの鶏舎も日当たりが良くなるように工夫されています。

この日は天気が良かったので、日の当たる場所で日向ぼっこをしたり、窓の隙間から顔を出して水を飲んだり、窓の格子や止まり木に登ったりしていました。

 

鶏の体にとって良いものを与える事を一番に考えているため、飼料には、遺伝子組み換え混入防止管理済、ポストハーベスト(収穫後)農薬不使用のものを使っています。とうもろこしや大豆、魚粉、緑餌(野菜、牧草)など、必要なものだけを与えています。

卵黄の濃淡は、鶏の飼料に含まれる色素に影響されると言われています。一般的に赤みの強い卵黄は、パプリカなどから抽出される色素を与えている場合もあります。色素の抽出には化学物質が使われる場合もあるため、蒼生舎では色素は与えていません。その為、蒼生舎の卵の卵黄は、レモンのような優しい黄色をしています。はじめて見ると、一般的な卵の色との違いに驚く方も多いと思います。

また、同じ鶏が産む卵でも日によって卵黄の色に違いが出てきます。同じ日に産まれた卵でも、産んだ鶏が違えば卵黄の色の濃淡に差が出ます。それは自然なことです。

 

人も鶏も、個性はそれぞれ。みんな違う

産みたての卵を見せていただきました。卵の殻の大きさ、色が1つ1つ異なります。鶏の種類や日齢(雛が産まれてからの日数)の違いなどによるものと言われますが、鶏1羽1羽、またその日によっても大きさ・色に変化があります。一般的には年を取るにつれて卵の大きさは大きくなると言われています。殻の色も同様に年を取るにつれて薄くなると言われていますが、個体差もあるので殻の色だけでその卵を産んだ鶏の日齢・育ち方を判断する事はできないそうです。

産みたての卵は温かくて、鶏たちが産んでくれた大切なものだ、と実感。卵が普段の食卓に当たり前にあることに、感謝しないといけませんね。

卵にはたんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素がバランスよく含まれていて、栄養価の高い食品と言われています。日頃の食事に取り入れやすく、和食・洋食などどんな料理にも合うのが特徴で、私たちの身近な存在です。

 

蒼生舎では毎朝8時から集卵を開始し1日に2~3回集卵を行っています。卵のパック詰めは、数が多い日は夜遅くまで作業をしている日もあるそうです。綺麗な卵を選別し、1パックにサイズの偏りが出ないように、手作業で丁寧にパック詰めをしています。

 

鶏が産んでくれた大切な卵を、手から手へ

長年、毎日卵を集卵し、選別し、パック詰めしています。今村さんの思いは、「安心なものをお客様にお届けしたい。」その一心で、鶏について日々研究されてきました。今村さんが大切に育てた鶏の卵を、お客様の元へ。手から手へと、思いが繋がっていると感じます。

 

蒼生舎とお客様の繋がり

今村さんの手書きの「たまご通信」は2005年の1月より開始し、まもなく20年を迎えます。大変長い間続けられていて、蒼生舎の平飼いたまごの代名詞となっています。1枚ずつ思いを込めてパックに封入しています。これを楽しみにされているお客様も多く、お返事の手紙が来たこともあるそう。

 

鶏を育てて卵を届けるひと、美味しい卵が届くのを楽しみにしているひと。直接は会えなくても、卵を通して、そしてたまご通信を通してつながっています。

 

私はここにいた人生だった

今村さんは「私はここにいる人生だったと思う。」と元気に答えられました。

気づけば早40年。元々は横浜の都会育ち。和歌山のこの地に来た事、養鶏に携わる事、蒼生舎のメンバーで鶏舎を大切に守り鶏たちと共に生活をする事、卵をお客様へ届ける事、そのどれもが今村さんの人生だったのだと。愛着といった言葉ではなく、自然な事だったのだと思う、と語られました。

そして、「この先も体調には気を付けて、長く養鶏に携われるよう頑張りたい。」と意気込まれています。

「卵について一番分かってもらいたいのは、鶏が卵を産んでいるということ。蒼生舎の私たちが卵を作っているのではない。夏の暑い時も冬の寒い時も鶏は頑張って卵を産んでくれている。その事を心にとめて卵を食べて頂けると有難いです。」

今村さんが強く思い、多くの人に伝えたいメッセージです。

「かえりはこっち またきてネ」 帰りの道も迷わないようにと、看板が教えてくれています。今村さんの人柄がこの看板に表現されているようでした。

蒼生舎の卵は、くせがなく優しい甘さがあります。毎日食べたくなるような、そんな味わいの卵です。鶏が育つ環境から鶏が毎日食べるものまで、鶏の本来の生活や体に良いものをと考えこだわり、鶏が産んだ大切な卵を多くの人に届けたいという思いが蒼生舎とビオ・マルシェ、そしてお客様を繋げています。(スタッフ 中井)

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