和歌山県有田郡の平飼い養鶏場「蒼生舎」を訪問してきました
2024.11.19
今回は、希少になりつつある原木栽培の椎茸の生産者、門田隆夫(大阪府能勢町)さんの栽培場を訪問しました。静かな森の中、自然そのものの環境で育てる原木栽培ならではの苦労や、1年を通して原木椎茸を届ける工夫について話を伺いました。
椎茸の栽培方法には「原木栽培」と「菌床栽培」の2種類があります。
原木栽培は、原木に穴をあけ、きのこの元となる「種菌」を打ち込み、山に伏せ込んで「ほだ木」を作り、椎茸を発生・収穫する栽培方法のこと。木の栄養をいただきながら、年月をかけてじっくりゆっくり育てた原木椎茸は、肉厚で歯ごたえがあり、芳醇な香り、奥深い味わいがあります。ひと昔前はこの原木栽培が主流でしたが、木の運搬などの重労働と季候に左右されて出荷量が安定しない等の理由から、年々生産戸数が減少しています。
これに対して、現在流通している椎茸のほとんどは、菌床栽培。室内で温度湿度管理ができ、安定して生産ができる利点があります。菌床栽培では、ほだ木の代わりに、おがくずや米ぬかなどで作った培地(きのこが発生する土台)に種菌を植え付けて発生させます。原木栽培と比べて発生・収穫までの期間が3~6か月と短い分、歯ごたえも柔らかく、香りも控えめです。
門田さんの栽培場は、日本棚田100選にも選ばれるほど美しい自然が広がる、大阪府能勢町長谷(ながたに)の森の中にあります。
車がやっと通れるほどの細い山道を登っていくと、民家が点在する棚田が現れます。竹やヒノキが生い茂る森の中へさらに車を進めると、ナラ・クヌギの木々に囲まれた栽培場が見えてきました。
訪れた時期は2月中旬。静まりかえる森の中はキンと寒く、気温は氷点下でした。
栽培場には「ほだ木」がズラリと並び、積もった雪の間から、ポツポツと小さな椎茸が顔をのぞかせています。足元には、たくさんの枯れ葉が重なっていてしっとりと適度な湿り気があり、木漏れ日が降り注ぐ、そんな静かな場所です。
「椎茸栽培は父の代から」と話す門田さんは、この地で50年以上原木栽培の椎茸をつくり続けてきました。
門田さんのお父様は、当時炭を焼く仕事をしていました。次第に主要な燃料が石油などに代わり、炭の需要がなくなったことをきっかけに原木栽培での椎茸づくりを始めました。
お父様の姿を見て、肌で感じながら栽培方法を覚えていった門田さん。お父様の後を継ぎ、現在は奥様・息子さんと協力しながら、栽培を続けています。「あと何年作り続けられるかわからないけど、動ける限り、この仕事を続けていきたいなと思っています」と話します。
息子さんも、門田さんと共に20年以上椎茸づくりをしています。
「後を継がれるんですか?」とお聞きすると、「おやじの姿をみてきたからね」と。門田さんがお父様の姿を見てきたのと同じように、息子さんも門田さんの姿を見て、椎茸づくりを続けていくそうです。
栽培に使う原木は、地元のナラやクヌギ。それを自身で伐採し、種菌を打ち込みます。山の中に運んで伏せ込むと、菌が木の養分を吸収しながら生長していきます。椎茸が発生・収穫できるようになるまでに、1年半から2年はかかります。発生し始めたら、5~6年は収穫できます。
「薬品など何も使いません。木の栄養と水だけで育つ。つくるのに時間はかかるけど、歯ごたえが全然ちゃうよ。椎茸が木の皮を破って出てくるから形は悪い、せやけど味はいい。」と門田さんは、静かに誇らしげに話します。
一方、森の中は自然そのものであり、昔ながらの栽培方法を続けているからこその悩みも多いと言います。
「せっかく作ったもんもアライグマや鹿に食べられてしまう。温暖化で気候がよめないこともある。木を切るのは危険やし、重たいもんを運ぶのもほんまに大変。大変なことも多いよ。」と心のうちを明かします。
気候に左右されやすい原木栽培の椎茸。
門田さんは、1年を通してできる限り安定して椎茸をお届けするために、「森での栽培」と「ハウス栽培」を組み合わせています。
森の中で育てる椎茸は「低温性」の品種で、気温が高い時期には発生しないため、出荷時期は10月下旬から4月上旬までです。ただ、1、2月は寒くて凍ってしまい生長しないため、森の中からの出荷はほとんどありません。
一方、春と秋は出荷量が増えます。適度な気温で雨が降るとたくさん収穫できます。季節外れの台風がくると、ほだ木が刺激されて一気に発生・生長し、収穫作業が追いつかないこともあります。
ただ、雨が降らない期間が続く、4月上旬なのに暑すぎる、動物に食べられてしまった、などの理由から急に出荷量が落ち込む場合もあります。
森の中での栽培は自然まかせなので、特に気候に左右されやすく、安定的な出荷は難しいです。
ハウス栽培の椎茸は「高温性」の品種のため、比較的気温が高くても発生します。また、室内の温度調節をしながら栽培しているので、森の中で育てる椎茸よりも、気候に左右されにくいのが特徴です。
寒い時期はハウスを加温しています。椎茸を栽培し終わった「廃ほだ木」などを釜で燃焼させ、その熱で沸かしたお湯をハウス内に巡らせたパイプに流して循環させて温めます。
暑い時期は、ハウスの屋根に遮光幕をかけて太陽光を遮り、ハウス側面を開けて熱がこもらないように温度調節をしています。そのため、1年を通して出荷できます。
ただ、暑すぎる時期・寒すぎる時期は、このような対策をしても思ったように生長してくれないことも多く、ハウス栽培ならではの難しさもあるそうです。
寒い時期は、ゆっくり生長する分、笠が分厚く歯ごたえがあります。また、笠表面の色が濃く、味も濃くなります。
一方、暑い時期に出荷される椎茸は、早く生長する分、笠の厚みは寒い時期に比べて少し薄く、程よい歯ごたえです。暑さで水分が蒸発しやすいので笠表面の色はやや薄めで、味はあっさりしています。
笠の裏を見ると、ハウス栽培の方が白く綺麗、森の中の栽培の方が茶色っぽいという特徴もあります。
たまに笠表面にひび割れがみられるものがありますが、適度に空気が乾燥しつつ、寒さにあたることでできるものです。品質不良ではなく、むしろおいしい椎茸であるという証拠です。
同じ門田さんの椎茸といっても、育つ時期、気温・湿度、栽培場所・方法によって、全く違います。
「これはハウスの中で育ったものだな」「寒くなって肉厚になってきたな」など、椎茸を味わいながら、育つ環境や季節の移ろいを感じられるのも門田さんの椎茸ならではです。
森の中で育てた椎茸のうち、笠が開ききらずに内側にくるんと巻きこみ、肉厚のものを「どんこ椎茸」として出荷しています。
基本的には春と秋が出荷のピーク(10~11月頃、3~4月頃)ですが、その中でもどんこ椎茸にとって最適な気温と適度な雨が降った時にしかとれないため、いわばプレミアムな椎茸です。
肉厚でぷりぷり・コリコリとした歯ごたえ、芳醇な香り、奥深い味わいの原木椎茸。門田さんは「煮ても焼いてもおいしい。焼いてポン酢で食べたり、バターをのせてもええよ。」と話してくれました。美味しいからこそシンプルな味付けで、昔ながらの原木椎茸をぜひお試しください。
(スタッフ 西岡)
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