韓国人が教える、きゅうりキムチ(オイキムチ)のレシピ
2022.6.28
韓国料理といえば、食卓に所狭しと並ぶおかずが思い浮かびます。これは、食事の時間を大切にする韓国の食文化でもありますが、一番は韓国のオンマ(お母さん)の愛情です。オンマはどんなに忙しくても、おかずをたくさん並べて、家族のお腹を満たすことをいつも考えています。
そんなオンマを支えるのが「仕込み」。キムチや味噌、ナムルなどの常備菜を一度にたくさん仕込んで、毎日の食事に使います。食事作りの負担を減らし、時間がなくても手作りのあたたかいご飯を食べるための知恵です。
この”タクミさん家の韓国家庭料理”では、韓国出身の料理研究家・タクミセイコさんに、ビオ・マルシェの宅配のオーガニック食材を使ったレシピをご紹介いただきます。
第一回目の前編は、韓国料理の象徴「白菜キムチ」の仕込み方。後編では、じっくり発酵させた「白菜キムチ」の展開料理を3品作っていただきました。
タクミセイコさん
韓国料理研究家
韓国ソウル出身
Instagram:@azisai0427
こんにちは。タクミセイコです。約30年前に日本に来てから、韓国料理研究家をしています。約15年前に自宅で料理教室をはじめました。今は主にInstagramで日本人の口に合う韓国料理のレシピを発信しています。
昔の話になりますが、私が日本に来たばかりの頃に、手作りのキムチをご近所さんにおすそ分けしたことがありました。すると、スーパーで売られているキムチとは全く違う本場特有の辛さや匂いに、とても迷惑そうな顔をされたことを覚えています。そこから少しずつ、日本人の口に合う韓国料理のレシピを研究するようになりました。
料理研究家というと、たくさんの調味料を使って凝った料理をするイメージがあるかもしれません。しかし、私はそうではありません。旬の食材と、あとは塩と油さえ良いものを使っていれば、きちんと美味しいものに仕上がると思っています。
これから、素材の味を生かした辛すぎない韓国の家庭料理をお伝えしていきます。普段から私が作っているレシピなので、ぜひたくさんの方に作っていただけると嬉しいです。
韓国人は毎食「キムチ」を食べます。我が家も、洋食の日でもついついキムチを出してしまいます。韓国人にとって「キムチ」は、日本の「漬物」のような、保存食・ご飯のつけ合わせとは少し違った存在です。そのまま食べるのはもちろん、料理に使ったり、隠し味としてポイントに使ったりと、家庭によって使い方はさまざまです。キムチに入れるものや味も家庭によって全く違います。お母さんが美味しいと思う味がその家庭の味になります。韓国では、娘の結婚が決まると一番にキムチの作り方を教えます。自分の実家の味と、旦那さんの実家の味のいいところを足して、また新しい家庭の味になっていきます。
韓国では、野菜であればほとんどなんでもキムチにしてしまいます。中でも定番の一つが白菜キムチ。塩漬けした白菜に、ヤンニョムといわれる合わせ調味料を塗り込んで発酵させたものです。どの家庭や飲食店でも必ず常備しています。
今回レシピをお伝えするのも、白菜キムチです。日本で作られている白菜に合うよう、レシピを考えました。私は日本に住んで長いので、普段もこのレシピで作っています。日本人でも食べやすいよう、唐辛子やニンニクは控えめにしています。実は韓国人の私も激辛は苦手なので、辛さの心配はいりません。ぜひ失敗を怖がらず、好みの発酵具合を探してみてください。
有機白菜…1株
塩…200g
水(水とぬるま湯を500mlずつ)…1ℓ
・白菜の芯側から1/3程度包丁で切れ目を入れて、そのあとは手で半分に割く。半分になった白菜も同様に切れ目を入れて割き、1株を4等分にする。
・4等分した白菜を10時間程度、室内で干す。
①ボウルに塩と水を入れ、塩を溶かす。
②白菜を入れて、全体に塩水をなじませる。なじんだら、芯が必ず塩水につかるようにし、その上に、2ℓのペットボトル2本分程度の重りを置く。
③6~10時間程度漬ける。白菜の漬物より少しやさしい塩味を目安に、塩漬けできているかを確認する。漬けすぎて塩辛くなった場合は、水に少し浸けて塩分を抜き、適度な塩味に戻す。
④塩漬けができたら、水で白菜を洗う。洗った後は芯に水気が残らないよう葉を下側にし、しっかり水分を絞る。
ヤンニョムとは唐辛子やニンニクなどを混ぜ合わせた韓国伝統の合わせ調味料です。ナムルに和えるものも、チキンに絡めるものも、それらをまとめてヤンニョムと呼んでいます。日本ではあくまで料理に使う調味料というイメージですが、韓国では少し違います。「今日は味噌ヤンニョムが食べたいな」と思って、そこから味噌ヤンニョムに合わせる料理を考えます。ヤンニョムを中心に献立を組み立てるのです。今回作るキムチヤンニョムは、あつあつのご飯にのせてごま油を回しかけて食べるのが私のお気に入りです。冷ややっこや生牡蠣にもよく合います。みなさんも白菜に塗り込む前に、ヤンニョムが主役の料理も試してみてください。
有機大根(厚さ2~3mm、長さ10~15㎝の千切り)…1/2本
有機青葱(5~6㎝のざく切り)…1/2束
有機ニラ(5~6㎝のざく切り)…1/2束
有機小松菜(菜の花でも可。葉のみ横に1㎝のざく切り)…1束
有機ニンニク(すりおろし)…50g
有機生姜(すりおろし)…30g
梨(すりおろし)…2/3個分 もしくは柿(すりおろし)…1個
あみの塩辛…50g
有機甘酒…100g
唐辛子粗びき(甘口)…80g
唐辛子細びき(甘口)…40g
アンチョビ…小さじ1
いしる(ナンプラーでも可)…大さじ3
塩…適量
出汁(乾物でとっても、粉末でもお好みで。濃いめにとる)…約200cc
・青葱は栄養があるので根っこまでいれる。根っこの太いところはヤンニョムが回りにくいので、縦に半分に切ってから斜めに切る。
①全ての材料をボウルにいれて混ぜる。手でいじりすぎると野菜のえぐみがでるので、優しく指先をまわし、空気を含ませるように混ぜる。
③混ざりきったら味見し、自分が好きな味になるよう塩味と甘味を調整する。甘味が足りない場合は甘酒を足す。
・唐辛子を2種類用意できない場合は、粗びきを使ってください。細びきだけだと唐辛子が水分に流されて、白菜が白っぽくなります。
・味見したときに塩辛いと感じても、発酵させれば塩味は落ち着きます。しょっぱすぎなければ大丈夫なので、あまり気にしないようにしてください。
・甘味のフルーツは、他の季節のフルーツで代用してもかまいません。ただし、発酵キムチの場合は、酸味のない果物(梨や柿など)がおすすめです。もし発酵させずにすぐに食べたい場合は、酸味のある果物(りんごやパイナップルなど)でも大丈夫です。砂糖をいれると味がとがるので、個人的にはおすすめしません。オリゴ糖や梅ジュースでも自然な甘味になります。
①白菜をバットに並べる。
②お玉一杯分程度のキムチヤンニョムを手に取り、白菜の葉一枚一枚に塗り込む。塗り込んだ後、手に残ったキムチヤンニョムを芯に近い方から挟み込んでいく。
③一番下の葉を3・4枚程度残して、それ以外の白菜を半分に折る。
④半分に折った白菜を、残りの3・4枚の葉で交互に包む。
⑤包み終わったらチャック付の鮮度保持袋などに、キムチヤンニョムがこぼれないよう、受け皿側を下にいれる。
①鮮度保持袋に入れたら、夏場なら5~6時間、涼しくなってきたら1日程度常温に置いておく。
②小さい泡がブクブクし、甘酸っぱい匂いがしてきたらうまく発酵が進んでいるサイン。味見をしておいしければ冷蔵庫に入れる。
③発酵中は白菜から水分がでるので、時々ひっくり返して、水分を全体に行き渡らせる。必ず元の状態(受け皿側を下)にして冷蔵庫に戻す。
④1週間程度経ったら、一度味見をする。その後は好みの味になるまで発酵させる。
キムチ作りでつまずくポイントは、発酵だと思います。自宅で料理教室をしている時も、「家で作っていたら変な匂いがしてきたので捨ててしまった」という声がとても多かったです。でも、悩むことはありません。美味しくなければとにかく発酵を続けてください。賞味期限はあってないようなものなので、2~3週間冷蔵庫に放置してもまったく問題ありません。韓国では、3年越し、5年越しのキムチもあるぐらいです。発酵の途中は野菜のえぐみで後味に苦みが残ります。その場合は、まだ発酵が足りていない証拠です。間違ってもここで諦めて捨ててしまわないようにしてください。ここからさらに発酵させ、野菜から出た苦味を白菜に吸わせることによって、それが旨味になります。白カビができても大丈夫です。塩や唐辛子を使っているので、そうそう腐りません。白カビができた部分に水分を行き渡らせれば、またそのまま発酵を続けられます。仕込みさえすれば、あとは発酵が進むのを待つだけで、自然と美味しくなります。
同じヤンニョムを使っても、発酵するかしないかでキムチの味が変わります。また、野菜が変われば全く違う味になります。
「カクテキ」と呼ばれるキムチです。発酵させても、浅漬けで食べてもよいので、お好みでどうぞ。
有機大根(1.5㎝幅の角切り)…1/2本
キムチヤンニョム…60g
塩…20g
砂糖…15g
粉末だし…小1
①角切りにした大根に、塩と砂糖をいれて混ぜる。
②水分が出てきたら、水分を捨てる。大根は洗い流さない。
③キムチヤンニョムを大根と和える。
④発酵させる場合は、容器に入れて冷蔵庫で発酵させる。1週間程度経ったら、一度味見をする。その後は好みの味になるまで発酵させる。
・発酵させてから食べる場合は、辛みの強い下部を使ってください。発酵させずに浅漬けで食べる場合は、甘みのある上部を使うとよいです。
ネギキムチは発酵させずに浅漬けで食べると、シャキシャキとした食感を楽しめます。もちろん発酵させてもよいです。基本はアレンジせずに、そのままご飯やラーメンと一緒に食べてみてください。
有機青葱(10㎝幅で切る)…1束
キムチヤンニョム…30g
ごま油…大1/2
粉末だし…ひとつまみ
いりごま…適量
①青葱は根元の太い部分は斜め切りに、細い部分はまっすぐに10cm幅に切る。
②切った青葱に、ごま油、粉末だし、いりごまをふりかける。そこにキムチヤンニョムを混ぜてしんなりしてきたら完成。
牡蠣キムチ
韓国の中でも地域によってキムチの味は全く違います。例えば釜山(プサン)のキムチは海が近いので塩味が強く、私には少し塩辛く感じます。また、いれるものや量も家庭によってさまざまです。私の母は、出身地が牡蠣の産地だったので、生牡蠣をいれた「牡蠣キムチ」をよく作っていました。牡蠣は旨味が強く、発酵した後に味の違いがよくわかります。今では母の味を引き継いで、私も旬の時期には、必ず牡蠣キムチを作ります。
実家の「キムジャン」
韓国では一年分のキムチを仕込む「キムジャン」という日があります。今は季節を問わず一年中野菜が手に入るので、一度にまとめてキムチを仕込む家庭も少ないかもしれません。でも、私が学生だった頃は毎年「キムジャン」の日がありました。この日は母から「学校を休んで手伝って」と言われるほど、家族総出の一大イベントでした。普段は学校で勉強するのがあまり好きではありませんでしたが、この日ばかりは「学校に行って勉強するほうがマシだ」と思うほど、とても重労働だったことを覚えています。自分の家が「キムジャン」の日には近隣の人が手伝いにきてくれます。逆に、近所の家に母が手伝いにいくこともありました。
実家のキムチ冷蔵庫
韓国のほとんどの家庭では、大量に漬けたキムチを発酵し保存するための「キムチ冷蔵庫」を持っています。韓国の”嫁入り道具”の一つでもあります。昔は、大きな甕にキムチを入れて、土に埋めて保存することもありました。私は「キムチ冷蔵庫」を持っていないので、普段使っている冷蔵庫にいれています。容器は匂いが気にならないように密封されたものを使っています。ホーローのガラス容器や、たくさん漬けない場合は鮮度保持袋が扱いやすくておすすめです。
・青い海(塩)
・有機白米甘酒
・いしる
・有機金ごま油
前編はここまで。【後編】アレンジ自在、じっくり発酵させた「白菜キムチ」の展開レシピでは、発酵させた白菜キムチを使ってアレンジレシピをご紹介いただきます。ぜひご覧ください。
本記事のレシピは、韓国出身の料理研究家タクミセイコさんにご考案頂いています。有機野菜・オーガニック食材の宅配「ビオ・マルシェの宅配」で購入できる食材をふんだんに使った、ここでしか読めないオリジナルレシピです。
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