年末年始のごちそうをお手軽に、ビオ・マルシェの年末・2025...
2024.11.1
ビオ・マルシェオリジナルのはちみつ(アカシア蜜・百花蜜)でおなじみの、瀬尾養蜂園。滋賀県を拠点に季節の花々を追い、全国を旅しながら養蜂する移動養蜂家です。冬に鹿児島県でミツバチを育て、春は滋賀県大津で桜の花の蜜を採り、アカシアの花が咲き始める初夏からは北海道の富良野へと移動します。
今回は、北海道でのアカシア蜜の採蜜の時期に合わせ、ビオ・マルシェスタッフが取材に訪れました。採蜜の様子を見学しながら、移動養蜂家のお話やはちみつへのこだわりなど貴重なお話しを伺いました。
瀬尾養蜂園 現社長:瀬尾則夫さん
お父様の代から移動養蜂家を始めて2代目となる、現社長の瀬尾則夫さん。小さい頃からお父様の姿を見て、当たり前のように養蜂家の道を選ばれました。
毎年夏になるとミツバチが入った巣箱をトラックに積み、滋賀から北海道まで約1,500㎞の道のりを移動します。採蜜群(はちみつを運ぶミツバチ)だけでも200箱以上あり、交配群(農作物の交配をするミツバチ)も含めると600箱以上の巣箱を積み込みます。
ミツバチが入った巣箱をトラックに積み込み、北海道へ旅立つ様子
移動養蜂家として、最も大変で神経を尖らせるのは、「移動の時」とのこと。
長時間の移動はミツバチにとって、大変なストレスです。病気になることもあるので、滋賀から北海道までの大移動の前は毎年緊張感が高まります。それでも、いざ旅立ちの日が決まると、「今年の花はどうかな」とワクワクするそうです。
近年は、温暖化の影響でアカシアの開花時期が徐々に早まり、北海道へ向かう日程が6月中旬から6月上旬へ早まっているとのこと。それでも、到着するとすでに満開ということもあるそうです。
アカシアの花
取材に訪れたのは、6月下旬。北海道と言えども、25℃を超える暑い日でした。
アカシアの花も「残花」と言われる終盤の時期、貴重なアカシア蜜の採蜜の様子を見せていただきました。
ミツバチが飛び交う現場には、積まれた巣箱が並んでいます。設置する場所は、今回訪ねた富良野をメインに周辺地域含めて合計36か所あるそうです。広大な北海道での巣箱の管理には、スタッフをはじめ、時には現地の同業の方々にも協力していただいてるとのこと。
巣箱1段に入る巣枠は、6~9枚。巣箱は2段の設置をベースに、さらに良い群では、3段に調整して採蜜します。
この調整についての考え方は、養蜂家さんによって異なります。中には、ギリギリまでみっちりと巣枠を入れて巣箱を設置する養蜂家さんもいるそうです。
瀬尾養蜂園では、ミツバチの負担を軽減する採蜜を心がけています。そのため、ミツバチの体調や、運んでくる蜜の量などに合わせて、巣箱の段数と、巣枠の枚数を調整します。この調整の見極めには、長年の経験による勘が必要とのことで、熟練のスタッフさんに任されているそうです。
瀬尾さんによると、次の4つの条件が揃うと良いはちみつを採取できるそうです。
①ミツバチのコンディション
②天候
③気温(暑すぎず寒すぎないこと)
④花の開花
この中で、唯一、人が手助けできるのは、ミツバチのコンディションを保ってあげること。だからこそ、ミツバチが良い状態で働けるようにと、瀬尾さんは常にミツバチのことを考えています。
蜜を集めてくる働きバチは、みんな「メス」だそうです。
毎朝早くからメスの働きバチは巣箱を飛び出し、蜜を集めに行きます。こうして集めてきた蜜は「花蜜」と言います。水分量が多く、糖度が低いためサラサラの状態です。それを、ハチが体内でショ糖から単糖類に分解し、さらに羽で風を送って水分を飛ばし糖度を上げます。糖度が上がると、花蜜がトロトロのはちみつの状態になります。さらに糖度が78度~79度程に上がりきると、働きバチがミツロウで「蜜蓋」をかけます。蜜蓋が巣枠全体に掛かると、採蜜の時期です。
蜜蓋ができた様子
瀬尾養蜂園では、こうして巣箱の中で糖度が上がるのをじっくり待ってから採蜜をするため、糖度を上げる目的での人工的な加熱はしていません。ミツバチが集めてきた花の蜜だけで出来ている、正真正銘の「純粋はちみつ」です。(はちみつが結晶化していると濾過できないため40~45℃の加温をすることはありますが、それ以外は手を加えません。)
タイミングを見計らって、巣箱から巣枠を取り出します。
ミツバチを興奮させないよう注意しながら巣枠を取り出している様子
軽々と取り出しているように見えますが、蜜が満杯に詰まった巣枠は約2~3㎏。両手で持ってみても、ずっしりと重みを感じます。
巣枠を持つビオ・マルシェスタッフ
あの小さなミツバチたちが、これほどまでの量を集めるのには、花と巣箱を何度行き来するのだろう。そう思うと、健気な働きバチたちに頭が上がらない気持ちになります。
その後、蜜刀で蜜蓋を切り落とす「蜜蓋切り」の作業をします。
蜜蓋を切る様子
そして、蜜蓋を切った巣枠を遠心分離機に入れて、蜜を搾ります。
蜜蓋切り後、遠心分離機に巣枠を入れる様子
遠心分離機から出てくる採れたてのアカシア蜜
蜜蓋の見極めが重要で、作業が集中する日もあるとのこと。多い日には150箱ほど採蜜することもあるそうです。
ミツバチは、農作物を受粉させる役目も担います。瀬尾さんは近隣のスイカやメロンを栽培している農家さんにミツバチを貸し出しています。富良野は道内一のスイカの産地です。交配業務は3月中旬から9月初旬まであります。採蜜が終わった後も続くため、滋賀に戻れるのは9月頃になるそうです。
昔、水田の近くに設置した巣箱で、農薬の影響により何百万匹ものミツバチたちが死んだそうです。そこで、市役所や農協などの北海道の関係機関と養蜂家たちが集まって協議し、対策を講じた結果、農薬による影響は大幅に減りました。
こうして、農家と養蜂家とがお互いに協力し、自然と共存しながら、農業や養蜂に取り組んできました。瀬尾さんは、農薬の影響を受けないように、時期によって巣箱の設置場所を移動させるなど工夫しています。
北海道で集めたはちみつは、滋賀県大津市に運ばれて瓶詰します。
はちみつは粘度が高く機械化することは難しく、ひとつひとつ丁寧に手作業で瓶詰めしています。
はちみつが満杯に入った一斗缶の重量は約24㎏にもなるということで、相当な重労働です。
それぞれの種類ごとにタンクに分けられたはちみつ
気候変動が激しい中で自然を相手にするため、採れる蜜の量ももちろん安定することはありません。滋賀で蜜の便りを待つ奥様のみどりさんも、毎年ドキドキしながら、「今年の蜜はどうかな」と楽しみにされているそうです。今年は良いアカシア蜜がたくさん採れたとのこと。
はちみつには、れんげ蜂蜜やみかん蜂蜜など様々な種類があります。その中でも、アカシア蜜は、とても透明度が高く、クセがなくすっきりした味が特徴です。アカシア蜜として採蜜したはちみつでも、透明度や色はその年の状況によって変わってきます。アカシア蜜として出荷するかの見極めが重要。「プロに見せても恥じない、自信が持てるはちみつを出すこと」が瀬尾さんのポリシーです。
採蜜する場所と時期次第で蜜の色が異なっている様子
ただ、場所や時期が変われば、蜜の色や味にも多少の違いが出ることもあります。
瀬尾さんは、「そんな違いも自然のことと思って楽しんでもらえたら嬉しいですね。」とお話されていました。
アカシア蜜は、透明度が高く、まろやかな味わいが特徴です。コーヒーや紅茶の風味を損なわず、どんな料理にもよく合います。
みどりさんのおすすめは、アカシア蜜とお酢を混ぜて万能ダレを作っておくこと。きゅうりの酢の物や、甘酢ダレの炒め物など手軽に使えます。
はちみつを楽しむには、用途によって使い分けることがポイント。料理にはアカシア蜜がおすすめですが、ヨーグルトにかけるなど、しっかりとはちみつを味わいたい時には百花蜜がぴったり。うまく使い分けると、はちみつの風味が存分に味わえます。
大切に集められた自然の恵みをぜひ存分に味わってください。