島根県の奥地 弥栄町「やさか共同農場」を訪問してきました
2024.9.16
今回で2回目となる、有機キャベツ日記。5~6月の収穫に向けて生長する有機キャベツの様子を、ビオ・マルシェの生産者・吉沢さん(長野県飯田市)の畑からお届けします。今回は、発芽と育苗、畑への植え付けについて、息子の羽田さんにお伺いします。
羽田さんいわく、「キャベツ栽培は苗半作」。種を発芽させ、苗を育てる作業はキャベツの出来を大きく左右します。羽田さんが苗を育てるうえで最も大切にしているのは、温度と水分の管理。この時期の長野県は寒暖差が激しく、日中の気温は15度前後まで上がる一方、夜間は氷点下まで下がります。そんな気候のなかでも、セルトレイ(種を蒔き、畑に植え付ける大きさまで苗を育てるトレイ)を種の発芽に適した温度に保てるよう、ハウスの中で温床(電熱線が通った床)の上に並べます。寒い夜間はハウスを閉めきって加温し、暖かい日中は換気をして気温を調節しています。水やりは土が乾燥しないよう、一日1~2回程度様子を見ながら行います。こうして羽田さんたちに大切に見守られた種は、蒔いてから2週間程度で芽吹きます。
苗が手のひらサイズまで大きくなると、畑に植え付ける準備を始めます。暖かいハウス内で生長した苗を、急に気温の低い露地の畑に植え付けると、温度差で根の生長速度が低下してしまいます。これを防ぐため、温床から外して換気を行い、苗を徐々に外気温に慣らしていきます。
キャベツがすくすく育つために重要なのが、圃場の土づくりです。羽田さんは3つのステップに分けて土づくりをしています。
苗を植え付ける圃場には、有機キャベツ日記①で登場した自家製堆肥、ミネラル分を与えて耕し、肥沃な土壌を作ります。
「土壌分析」とは、圃場の土を研究機関へ提出し、栄養バランス等を数値化して把握すること。羽田さんはキャベツ本来の生長力を大切にして、基本的に元肥(苗を植え付ける前に与える肥料)のみ与え、追肥(苗の植え付け後に与える肥料)は行いません。土壌分析をすることで土にどんな栄養が足りていないのかを見極め、この後の元肥の量や成分を調整します。また、肥料を適量に抑えるこの方法なら、肥料のやりすぎによる害虫発生も抑えられます。
元肥として主に与えているのは自家製のぼかし肥料。
もみ殻、米ぬか、大豆の搾りかすを約1:2:3の割合で混ぜ、3週間ほど堆積させることで発酵させます。さらに、納豆菌や酵母菌・乳酸菌の入った発酵液を水に混ぜて散布します。こうすることで、微生物の働きで発酵が促進され、圃場の土に浸透しやすいぼかし肥料へと姿を変えます。このぼかし肥料と、土壌分析の結果に応じてカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を与えて耕し、土づくりの完成です。
葉が3~4枚展開し、根がしっかり張ったら「マルチング」をした圃場に苗を植え付けていきます。
「マルチング」とは、畑の土壌の表面をビニールなどの被覆資材で覆うことです。防草、保温、土の乾燥防止といった効果があります。こうした方法で、化学合成された農薬に頼らずに、雑草の被害を抑えています。
苗を植え付けたあと「トンネル」を行い、植え付け完了です。
「トンネル」とは保温、防虫のため被覆資材で畝を覆うことです。苗が生長しやすい温度を保ち、虫の侵入を防ぎます。キャベツは虫の被害が顕著に現れる作物。化学合成農薬を使わない栽培では、このような対策が重要なのです。
次回はトンネルの中で生長し、小さな赤ちゃんキャベツとなった姿をお届けします。