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有明海 秋芽一番摘みにこだわる「成清海苔店」を訪問

8月下旬、福岡県柳川市にある「成清海苔店」へ行ってきました。

店に入った瞬間から、海苔の香りがふわりと漂ってきます。まさしく焼き入れ工程の真っ最中。1日に1万5千枚もの海苔の焼き入れ作業をしているとのことで、取材中も手の動きを止める間がありません。そんなお忙しいなか、快く取材にお応えいただいたのは、成清海苔店二代目の成清忠さんです。

 

成清海苔店二代目 成清忠さん

海苔の名産地で56年以上続く「成清海苔店」

焼き入れ前の原料

福岡県柳川市は、有明海に面した海苔の名産地。この地で海苔の加工業を営む「成清海苔店」は、先代の頃から変わらず56年もの間、「秋芽一番摘み」の海苔にこだわって海苔の買い付けをしています。鮮魚店が漁師さんから競りで買い付けするように、海苔の業界にも「海苔師」と呼ばれる海苔の生産者たちがいます。海苔の種付けをして、育て、収穫し、成型して焼き入れ前の状態にするまで海苔師が行います。その原料を買い付けて、焼き入れ加工という重要な仕上げを担うのが海苔の加工業者です。「成清海苔店」では、その買い付けの原料を「秋芽一番摘み」に限定しています。その理由は、酸処理の影響を受けていない海苔へのこだわりと、美味しさの追求のためです。

酸処理の影響を受けていない「秋芽一番摘み」

買い付けした原料

「秋芽一番摘み」とは、その名の通り、秋の収穫時の一番初めに摘み取る海苔のことです。お茶と同じように一番摘みが、風味や等級が良いとされています。成清海苔店がこの秋芽一番摘みにこだわるのは、その味の良さはもちろんのこと、酸処理されていないからです。

一般的な海苔の多くは、「酸処理」がされています。酸処理とは、水中に浮遊した海苔からの病害を防ぐため、養殖網ごと薬剤に漬けて、また海の中へ戻す方法です。秋芽期には、“赤ぐされ病”などが発生するため、予防する目的で行われます。

また、一度、病気が発生してしまうと、海苔が収穫できないだけでなく、障壁のない海の中では周辺の海苔にも影響を与えてしまいます。海苔の収量を確保するためにも、一般的には酸処理は重要な作業のひとつと考えられています。

一方で、薬剤を使う酸処理については、農薬と同様に環境への影響も懸念されています。酸処理作業は、栽培期間の途中で行われるため、一番摘み以降は酸処理の影響を逃れるのは難しいとのこと。

成清さんも環境に配慮した海苔の生産の存続を望む想いで、買い付ける海苔は酸処理の影響を受けていない「秋芽一番摘み」だけにしています。

酸処理への考え方はそれぞれで、成清さんもお父様から引き継いだ30代の頃には、海苔師さんとも意見を交わし、ぶつかり合うこともあったそうです。

“海苔師からの預かりもの”

海苔の比較

ここ数年、温暖化による水温の上昇や異常気象・環境の変化により、海苔の収穫量に影響が出ています。収穫量が減った原因の一つが、海の栄養不足と考えられています。海苔の成長は、野菜と同じように海中の窒素、リン酸、カリなどの栄養素が必要となります。

2022年は、秋にほとんど雨が降らず、山や川の上流からの栄養分が海へ流れ込まなかったため、必要な栄養が届かず、海苔の収穫量が大きく減りました。これは、有明海の上にだけ雨が降っても意味がなく、山や川の上流で雨が降り、適度に栄養分が海へ流れ込むことが海苔の成長には最も重要だということ。海の中の環境だけでなく、周辺の環境や天候にも海苔の収穫量は左右されます。

また、近年の豪雨の影響で護岸のために沿岸がコンクリート詰めされていることもあり、昔のように雨と一緒に海に流れ込んでくる栄養分が減っているそうです。

訪問した8月末には、もう間もなく海苔師さんたちが準備を始める頃とのことでしたが、それも昔に比べるとだいぶ時期が遅くなってきているそうです。海苔は水温が下がらないと育たないため、時期を見計らって作業が始められます。

11月下旬から翌年3月末頃までの栽培期間中に、多くて10~12回の収穫を行うそうです。早めに摘み取れば海苔は色濃く良質ですが、収量はなかなか多くは採れません。収量を増やし効率よく摘み取るために1か月強待ってから収穫する海苔師さんもいるとのこと。

状態を見ながら収量と質のせめぎ合いです。自然環境と胞子を相手にする海苔師は長年の経験と勘が必要になるようです。その大事に育てられた海苔を買い付け、焼き上げて仕上げを行う成清さんは“預かりもの”として丁寧に扱います。

2021年の秋芽一番摘みとして入札会に出品された海苔(福岡有明海漁連共販)の合計枚数は、 62,449,200枚。2022年の合計枚数は46,754,200枚と激減。その状況を受けて成清さんの考えにも変化があったそうです。「昨年、収穫量が激減した時に、海苔があるのが当たり前ではないと気付きました。海苔師が大事に育てた貴重な原料を、最終加工して美味しく仕上げるのが私たちの役目なので、預かりものだと思って扱っています。」とのことでした。海苔師さんとぶつかり合いながらも、その苦労や想いがわかるからこそ良い商品作りに繋がっているのだと感じると同時に、海苔師さんたちとの信頼関係を感じました。

 

買い付けは、年に一度の一発勝負

だた、成清さんは秋芽の一番摘みのみにこだわるため、買い付けは年に一度の一発勝負。

ひとシーズンに10回程開催される入札会(福岡有明海漁連共販)の中の第1回目の入札会にだけ「秋芽の一番摘み」の海苔が出品されます。その1回に全精力を注ぎ、買い付けます。海苔師のご苦労をねぎらいつつも、おいしい海苔を作るべく厳しい目での見極めが必要です。

入札の際に書き込む入札手板

入札手板を見せていただきました。一番摘みだけで約600もある等級から、過去の結果も踏まえ、その年に一番売れるであろうものを決めるそうです。お話を聞くだけでもその瞬間の緊張感が伝わってきました。

有明海苔の美味しさの理由は、海の干満の差

有明海苔の特徴は、赤みをおびた黒色であること。その理由は、有明の海の干満の差で海苔が育てられる間に、水面に出て日光を浴びるためです。日中に光合成をし、夜は水中で栄養に変換されるため、栄養も旨味もたっぷりの海苔に仕上がります。

海苔の産地として比較されるのが、伊勢や瀬戸内海。各産地の海苔の大きな違いは、育てている間の環境です。伊勢や瀬戸内海では海苔が種付けから収穫までの間、水面に出ることがなく常に海に沈んだまま収穫まで育てます。太陽の日が当たらないため、有明海苔に比べるとより黒々しい色合いになります。

実際に、ビオ・マルシェの社内でも比較して試食してみると、伊勢海苔の方は磯の香りが強めに感じられました。一方、成清さんの海苔は旨味や甘みを感じるような味わいで、それぞれの特色を感じました。

成清さんのポリシーは「色よりも味重視」。秋芽一番摘みにこだわるのも、環境の面からの理由もありますが、一番は何よりも「美味しいから」です。やわらかく口の中でとけるような有明海苔は、湯を注いだだけで食べるのが一番贅沢で海苔そのものを味わえるのだと、成清さんおすすめの食べ方も教えていただきました。

秒単位の調整で行う「焼き入れ」作業

焼き入れの釜に入っていく原料の海苔

取材中も焼き入れのコンベアーは止まることなく動き続けていました。

250℃で10~12、13秒焼き入れます。色、香り、厚みなど原料の状態を見ながら秒単位で調整するそうです。せっかくの良い原料を活かすも殺すも焼き入れ工程に掛かっているということで、まさに職人技です。

乾燥機から出てくる海苔

焼いた後はそのままつながったコンベアーで送られ乾燥を行い、割れや折れ、色などを検品しながらB品となるものははじきながら検品して箱詰めされます。

 

重なり合って部分的に焼き入れできていなかった海苔

B品となった海苔も地元で販売されているそうで、大事な海苔は決して無駄にすることはありません。

素材が良いからこそ味付けも最低限で

厳選素材を使ったえびふりかけ

焼きのりのほか、味付け海苔やふりかけなども素材の海苔を活かした味付けです。

「栄養と旨味甘みを蓄えた有明海苔の素材の良さを味わってもらいたいので、味付けは最低限にしています。」とのこと。もちろん食品添加物無添加で、極力海苔そのものの味が分かるように余計なものは加えず作られています。

同じ海苔でも風味や色は全然違う

等級や厚みの違いによる仕上がりの違い

等級も厚みも違えば、仕上がりの色や風味も一目瞭然で別物です。厚みのある海苔の方から試食させていただいたため、一口目のインパクトが強く驚きました。「食べてもらう順番を間違えたな…」と成清さんも笑いながら、その違いについてお話いただきました。原料の時点で想像していたよりも良い仕上がりになることもあるそうで、自然の産物を扱う難しさをここでも感じました。

海苔の保管方法

海苔は低温で乾燥させて保管するのがベストとのこと。温度差が一番良くないそうです。ジッパー付きの袋などに入れて冷凍することもできるとのお話も聞いて驚きました。解凍時にはしばらく開封せずに常温で解凍し、汗が付かないくらいまで常温で戻せば冷凍前と同じように使うこともできるのだとか。

万一、シナシナになってしまったときは、フライパンにごま油を引いて味付け海苔にして食べるのがおすすめ。湿気た海苔の活用方法も伝授していただきました。無駄なく美味しく海苔を味わいましょう。

環境にも食べる人にも優しい’海苔作り’を続けたい

30代の頃に海苔の世界に飛び込んでから、海苔師さんの現場作業のお手伝いもするなど様々な経験を経て、こだわりの海苔生産に取り組んでこられました。今後もその姿勢は変えることなく、環境にも、食べる人にも優しい海苔を作り続けるために取り組んでいきたいと、これからの海苔作りに向けてもその想いもお話いただきました。

 

ビオ・マルシェの宅配 取扱商品

すべて有明海産 秋芽一番摘み だけを原料にした商品です。

商品
原材料
天日のり
乾海苔(有明海産)
味附おかず海苔
乾海苔(国産 有明海産)、砂糖、発酵調味料、しょうゆ、食塩、こんぶ、ムロアジ、かつおぶし、干しえび、とうがらし、(一部に大豆・小麦・えびを含む)
味のりふりかけ
乾海苔(有明海産)、ごま、大豆、砂糖、発酵調味料、食塩、醤油、こんぶ、ムロアジ、かつおぶし、とうがらし(一部に小麦、大豆を含む)
えびふりかけ
アキアミ(国産)、乾海苔(有明海産)、かつおぶし、ごま、発酵調味料、醤油、砂糖、食塩、昆布、とうがらし、(一部に大豆、小麦、えびを含む)

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