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ナチュラルワインならではの造り方 その2~スパークリングワイン編

スパークリングワイン

暑い季節にはよく冷やした泡が欲しくなりますね。

コルクを抜くときの緊張とテンションのあがる音、グラスから立ち上る綺麗な泡の粒が、ちょっと特別で贅沢な気分を演出してくれるお酒の代表格スパークリングワイン。ところが、スパークリングワインほど選ぶのが難しいワインもないかもしれません。

前提の知識がないとラベルに記載されている情報を読み取るのは難しく、名称もシャンパーニュやカヴァなど様々。価格の差も大きく、その理由もぱっと見ではわかりません。

なにより、一度栓を開けてしまうと泡が抜けていってしまうことから、よほどの泡好きでないと飲む頻度は高くなかったり、乾杯の時に1杯だけ飲む程度で、スパークリングワインついて詳しく知る機会がないかも知れません。

しかし、スパークリングワインには、さらにはナチュラルなスパークリングワインのスタイルや味わいはとても多様です。今回は、その面白さについてお話していこうと思います。

スパークリングワイン造りの基礎知識

ワインにおける発酵の基本

スパークリングワインを理解するにはまず、ワインにおける発酵の基本を忘れないことが重要です。

「酵母+糖分→アルコール+炭酸ガス」

ブドウの糖分を微生物である酵母が消費して、アルコール(エタノール)と炭酸ガス(二酸化炭素)を排出するという発酵のシンプルな仕組み。

これはすべてのワインにおいて共通するもので、販売されているワインが発泡性か非発泡性かに関わらず、ブドウが発酵してワインになるときには、炭酸ガスが発生します。

スパークリングワインの造り方

スパークリングワインの造り方

では、その原則を踏まえて、スパークリングワインの造り方を見ていきましょう。スパークリングワインは当然ながら、泡があるワインですので、どうやってワインに泡を発生させるかでまず大きく分けてふたつの方法があります。

 

①酵母と糖分を添加する方法

②酵母と糖分を添加しない方法

酵母と糖分を添加する方法

まず、非発泡性のワインを造ります。そのワインに酵母と糖分を加えることによってもう一度発酵を促し、その時に発生する炭酸ガスをワインの中に閉じ込めることによってスパークリングワインを造ります。

メトード・トラディショナル(トラディショナル方式)

二次発酵後に熟成をさせている様子

 

シャンパーニュに代表される「メトード・トラディショナル」(Method Traditional)という製法では、ワインを瓶に詰めた状態で酵母と糖分を加え、瓶内二次発酵を行い炭酸ガスを発生させます。シャンパーニュの場合は瓶内二次発酵後の熟成期間を最低でも15カ月を経なければなりません。

スペインのカヴァ、イタリアのフランチャコルタ、ドイツのゼクト b.A.、フランスでもシャンパーニュ以外の地域で造られるクレマンなどが、熟成期間の規定などそれぞれ異なりますが、このメトード・トラディショナル(ときにシャンパーニュ方式とも言います)を行って造られるスパークリングワインです。

メトード・シャルマ(シャルマ方式)

そして、この2回目の発酵をビンの中ではなく、タンクの中で行うのが、「メトード・シャルマ」(Method Charmat)です。小さな瓶ではなく大きなタンク内で二次発酵を行いますので、安定して一度にたくさんの量を仕込めるため、トラディショナル方式に比べてコストを抑えることができます。

酵母と糖分を添加しない方法

メトード・アンセストラル(アンセストラル方式)

次に、酵母と糖分を添加しないで造る方法です。ここではナチュラルワインの造り手が採用することが多い、「メトード・アンセストラル」(Methode Ancestrale )という方法をご紹介します。

田舎方式などとも呼ばれるのですが、とてもシンプルなもので、発酵中のワインをそのまま瓶詰してしまうのです。最初の発酵の仕組みを思い出して頂きたいのですが、果汁発酵してワインになる際には必ず炭酸ガスが発生します。

①の場合は、すべて発酵が終わって炭酸ガスがない状態まで経ったワインにもう一度炭酸ガスを発生させるのですが、「メトード・アンセストラル」は最初の発酵の際に発生するガスをそのまま瓶の中に閉じ込めます。

この場合、炭酸ガスの質や量はその時のワインの発酵状況によって様々で、往々にして瓶内二次発酵の泡よりはガス圧が弱かったり、持続性に欠けたりします。

さて、前回の白ワインとオレンジワインの話同様、ここまではナチュラルワインに限った話ではありません。では、ナチュラルなスパークリングワインとはなんでしょう?原料のブドウについては前回と重複するので割愛します。

そして、さきほどは触れなかった、炭酸ガスを人工的に注入するというスパークリングワインの造り方もあるのですが、その方法はナチュラルワインのワイン造りには馴染まないこともご想像頂けるかと思います。

また、タンクで行うシャルマ方式のナチュラルワインも多くはありません。小規模で自然なワイン造りを行うワイン造りには効率を優先した方法を採用することがあまりないからかもしれません。

ペティアン・ナチュレル~ナチュラルなスパークリングワインならではの特徴

ナチュラルなスパークリングワインは主に、「メトード・トラディショナル」と「メトード・アンセストラル」が採られていることが多いでしょう。

すでに「シャンパーニュ」というブランドが確立しているシャンパーニュという産地では、あえてナチュラルなワイン造りに挑む造り手は決して多くはないのですが、ブドウ栽培はもちろん、二次発酵に使用する酵母と糖も、オーガニック認証のある酵母や自らのブドウの糖を使用したり、ナチュラルで時間をかけたワイン造りを実践し、類まれなシャンパーニュを生み出しています。

シャンパーニュに限らず、そういった過程を経て造られたスパークリングワインは、たとえ抜栓翌日や2日後に泡が飛んでしまっていても、ベースとなるワインのポテンシャルの高さゆえか、上質な非発泡性のワインとして楽しめるのです。

一方で、ナチュラルであることにこだわる見方から、酵母と糖分を添加するという行為がナチュラルと言えるのか?という疑問が生まれることもあります。

しかし、そもそもナチュラルワインとは、人の関わりも含めたその土地の環境や歴史・文化を映し出そうとするものです。シャンパーニュという場所で瓶内二次発酵というワイン造りが確立していったことも含めてワイン造りを行うのがナチュラルワインなのではないかなと思います。

デコルジュマン(澱抜き)の様子

 

さて、ナチュラルなスパークリングを飲んだことがあるという方の中には、とてもにごっていたり、泡がほとんどなかったり、逆に栓を抜いたとたん泡があふれてくるような、個性豊かなスパークリングワインに出会った方もいるかもしれません。

そういったスパークリングワインのスタイルとして多いのが、「ペティアン・ナチュレル」(Petillant Naturel )です。「 ペットナット」(Pet-Nat)という略称も親しまれ、ナチュラルワインファンの人気を集めています。

ペティアン・ナチュレルの造り方として一番近いのは「メトード・アンセストラル」で、発酵途中のワインを瓶詰めするアンセストラル方式は、ワインの状態やタイミングが造り手によって様々であるため、造り手の想像以上に泡の圧が弱くなったり、強くなったりします。そのために上記のような違いが表れるのです。

ペティアン・ナチュレルには明確なルールがありません。アンセストラル方式をとる造り手が多いとは思うのですが、ある程度発酵の終わったワインを瓶詰めし、自分のブドウ果汁を加えて、瓶内二次発酵を促す造り手もいたり、シャンパーニュ方式のように、発生した澱を瓶口に集め(二次発酵中の瓶を逆さまにしておきます)、それをデゴルジュマン(澱抜き)してコルクを打つ造り手もいれば、デゴルジュマンはせず、瓶詰したときの王冠そのまま出荷するという造り手もいます。

スタイルもかなり自由で、ときには、まだ発酵が続くかもしれないから、念のためスパークリングワイン用のボトルに詰めておいたけれど、ほとんど泡は出なかった。というケースもあります(もちろん栓は王冠です)。

ちなみに王冠ですが、密閉性も高くコルクよりも安価であるため、規模の小さなナチュラルなワインの造り手や、デゴルジュマン~コルク打ちの際のわずかな酸素の混入による酸化を防ぎたい造り手が使用しています。

とても自由で気ままなスパークリングワイン。というと聞こえは良く、私自身もとても好きなスタイルなのですが、飲み手目線で考えるととても選びにくいものです。

しっかり泡があるものが欲しいのに、開けてみたらほとんど泡がない。とか、キリっと爽やかな乾杯用スパークリングにと思ったら、とてもエキス分の豊かなスタイルだったり。それぞれのワインとその造り手についてしっかりと知識を持っておすすめしてくれる人が不可欠かもしれません。

ただ個人的には、そのスタイルの幅の広さも含めて、ワクワクしながら楽しめる気持ちの余裕が一番大切で、それこそがナチュラルなスパークリングのスタイルにぴったりだなと思います。(もちろん目的のスタイルがあれば、ちゃんと聞いた方が確実です!)

ナチュラルなスパークリングワインと食事

ナチュラルなスパークリングワインの味わいの特徴

味わいの特徴・・・やさしく、穏やか

①泡とワインの馴染みがよい。
②泡が抜けても全然おいしい。
③爽快でも豊かな果実味。

抜栓後も、時間とともに変化を楽しめ、野菜も魚もにデザートとも相性が良い。

今まで見てきたように、ナチュラルなスパークリングワインのスタイルはかなり幅があります。ですが、一般的なスパークリングワインに比べて、「エキス分が多く、爽快な酸があっても果実味やうま味も乗っている」というところが共通するところです。

ナチュラルなスパークリングワインに合うグラス

まずはグラスですが、シャンパーニュなど熟成時間も長い瓶内二次発酵を行っているスパークリングワイン以外は、通常の白ワイングラスがおすすめです。よりナチュラルな果実味を豊かに感じて頂けますし、ときにナチュラルワインにありがちな温泉のような香りなども飛びやすくなります。温度的にもブドウの旨味を広げるため冷やし過ぎない方がおすすめです。

酸の豊かなスパークリングは、ハーブや香味野菜を使った料理を引き立てます

スパークリングワインは、最初の乾杯やアペリティフとして食事の冒頭に楽しむことが多く、もちろんその場面でも活躍するのですが、メインとなる食事と一緒にでも十二分に楽しんで頂けます。

たとえば、酸の豊かなスパークリングには、トマトとモッツァレラのカプレーゼやスモークサーモンのサラダ、餃子やネギやニラなど香味野菜を使ったお肉との炒めものなどもおすすめです。

エキス豊かなスパークリングには、ソーセージや肉、洋食など濃く旨味のある料理

エキス豊かなスパークリングには、肉感のあるソーセージや、豚肉のコンフィ。白身魚のムニエル、とんかつやエビフライなど洋食系とも相性がいいです。

先ほども触れましたが、丁寧に造られたナチュラルなスパークリングワインは数日を経て泡が弱くなってしまっても、味わいは抜けてしまうことはありませんので、最後まで味わいの変化を楽しみつつ飲み切ることができると思います。

ナチュラルなスパークリングワインの選び方

ラベルの見方

スパークリングワインのラベル

そして、肝心なナチュラルなスパークリングワインの選び方ですが、図のようにラベルにも「どのような造り方か」「生産者名」「ヴィンテージ」「甘辛表記」などは確認することができます。

しかし、「酸味が強いのか」「果実味が豊かなのか」など味わいについてはほとんどラベルからは読み取ることはできません。その地域のスパークリングワインの特徴を知っていたりすれば、ある程度予測は付くかもしれませんが、特にナチュラルな造り手の場合それに一致するとは言えません。インターネットで探すこともできるかもしれませんが、ヴィンテージやロットなど、本当にそのワインと同じかを確認するのは難しいことです。

自分に合ったナチュラルなスパークリングワインを選ぶには

ですので、いつもそこに戻るのですが、販売されているお店の店員さんとのコミュニケーションが最も信頼できる方法です。手間のかかることかもしれませんが、一度関係性ができると次の時には好みのワインをおすすめしてくれるかもしれません。

ナチュラルワイン選びにおいては、造り手やそのスタイルに造詣の深いプロの方を見つけることが、ワインを理解すること以上に必要なことかもしれませんね。

 

次回は、秋ごろを予定していますので、いよいよナチュラルな赤ワインの世界に入っていこうと思います。
赤ワインは渋いから苦手という方もいらっしゃると思いますが、ナチュラルな赤ワインにはとても飲み心地のスムースな渇きをいやす赤ワインなどもありますので、お楽しみに。

ディオニー 遠矢さん

遠矢 敬宏(ディオニー株式会社)

偶然飲んだワインがおいしかったことから興味を持ち、ワイン専門店で勤務。さらに現地のワイン造りを学びたいと思い2011年にフランス・ロワールへ。そこで出会った醸造家の新井順子さんのワイナリー「ドメーヌ・デ・ボワルカ」で研修生としてワインの生産の仕事に携わる。帰国後は、ワインを提供するレストランでソムリエをしながら、より生産者の近くで仕事ができるインポーターの仕事を目指しディオニー株式会社へ入社。現在は、営業として働きつつ、ナチュラルワインの理解を深め、より気軽に楽しんでもらうために活動中。

この記事は、2021年11月、ビオ・マルシェの宅配で開催してきたオンライン講座「個性をたのしむ はじめてのナチュラルワイン」より、ナチュラルワインの基礎知識をまとめて、ご紹介しています。

【連載】個性を楽しむ はじめてのナチュラルワイン

・その1~ナチュラルワインとは?自然派、オーガニック、酸化防止剤無添加との違い
・その2 ~ブドウの栽培と醸造の違い
・その3~ナチュラルワインの選び方(ラベルの見方、世界の認証制度と酸化防止剤の規定)

ナチュラルワインのご購入

ワインポーター ディオニー のナチュラルワインは、ビオ・マルシェの宅配でご注文いただけます。(お届けは不定期となります。カタログと一緒にお届けする別チラシをご覧ください。)

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