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ナチュラルワインの基礎知識 その2 ~ブドウの栽培と醸造の違い

ナチュラルワインのブドウ栽培

京都のワインインポーター・ディオニー株式会社の遠矢さんに、ナチュラルワインの基礎知識を教えていただきました。お店で納得できるナチュラルワインを選びたい、知識を深めてナチュラルワインをもっと楽しみたい、という方におすすめの記事の二回目は、「ブドウの栽培と醸造の違い」です。

 

ワインとは、そもそもどんなお酒なのでしょうか。

ワインとはどんなお酒か

ワインはビールや日本酒と同じ醸造酒(醸造酒の説明)ですが、同じ醸造酒でも、日本酒は収穫されたお米に水を加えて蒸し、糖化(米のでんぷんを麹の酵素によって糖に変える)させなければ、酵母が発酵を行うことができませんが、ワインは収穫されたブドウに発酵に必要な糖分と水分が含まれているので、何も加えなくても発酵します。ブドウの果肉、種、皮などがそのままワインになっていくのです。そのため、ワインはブドウの質がワインの品質に直結するとも言えます。

では、ナチュラルワインとは、どうやって造られるのでしょうか。

ブドウ栽培

ナチュラルワインのブドウ栽培は、オーガニック栽培など化学的に合成された肥料や農薬などを使用しない、環境負荷の低い方法で行われます。肥料は動物性・植物性の有機物を原料とし、土を押し固める大型のトラクターなどは使用せず、ブドウの収穫も手作業で行うなどするため、大量生産にはあまり向いていません。土の中の虫や微生物がゆっくりと時間をかけて有機物を分解することで土壌が豊かになり、その土地の生態系や環境を反映したブドウを育てることができます。そのような畑は、土が柔らかく、歩いてみるととてもふわふわとしています。

一般的なブドウ栽培では、化学的に作られた肥料や農薬を使用します。化学肥料は価格が安く、安定供給ができ、成分は栄養そのものなので速効性があるのがメリットです。しかし、土の表面にまかれた肥料に根が引き寄せられ、土中深くに根が伸びなくなりがちです。その結果、土壌の深いところの要素を果実に反映させることができなくなる上、風雨などの持ちこたえられず倒れやすくなることもあります。
殺虫剤などの農薬を大量に使用すると、土中の虫や微生物、ブドウの果皮にいる野生酵母などの多様性が失われます。土の中に生き物がいなくなると、有機物の分解は行われなくなり、その活動によって攪拌されていた土は固まり、さらにトラクターで土はさらに固くなり、ます。すると、またブドウの木は根を深く伸ばせなくなり、化学肥料を必要とするようになるという悪循環に陥ってしまうかもしれません。地域や環境に関わらず同じような肥料を吸い上げているブドウからできるワインは味も画一的で単調になりがちです。

また、大量に一度に機械で収穫をすると、ブドウの実や木を傷つけてしまったり、細やかな良果の選別ができず、傷んだものが紛れ込んでワインのポテンシャルが下がってしまう可能性があります。

 

 

品種

ナチュラルワインのブドウの品種は、その土地にもともとあった伝統的な品種や今は忘れられてしまった品種を復活させる、または造り手が思い入れのある品種など、生産性や効率は必ずしも優先されるものではありません。その土地の気候風土や土壌に合ったブドウを栽培することで、その土地ならではの豊かな個性を活かしたワイン造りが行われています。

気候

ブドウの木は、比較的やせた土地でも育ち、乾燥にも強い果樹ですが、湿気による病気や虫による害も発生するため、南フランスのような乾燥していて、病気や害虫が少ない場所は、ナチュラルワイン造りに適していると言えます。例えば、日本のような温暖湿潤な気候のもとで、ナチュラルなワイン造りをすることはとても難しいことだとも言えるかもしれません。

ワイン造り

酵母

有機栽培の畑には酵母や微生物がたくさん存在しています。ナチュラルワインのワイン造りでは、ブドウの皮に付着した酵母や醸造所に住み着いている自生の酵母などによって自然に発酵を行います。
農薬などを大量に使用する畑では、酵母や微生物の多様性が失われてしまうため、自生の酵母による発酵は難しく、人工的に培養された酵母を添加して発酵を促すことが多くなります。

発酵

自生の酵母による発酵には、常にリスクが伴います。望ましくない種類の酵母が活発になってしまったり、発酵が急に止まってしまったりと、原因も様々あり、ほったらかしでは健全な発酵が進みません。
その抑制のために、亜硫酸など添加物を使用する場合もありますが、ナチュラルワインの造り手たちは、極力科学的な介入は避けようとします。清潔な環境を整え、観察を怠らず、手間と時間をかけて面倒を見るのです。

ろ過&清澄

ワインの外観を澄んだきれいなものにするために行う工程ですが、やりすぎると自然なワインの質感や風味を削いでしまうため、ナチュラルワインの生産者は控えめです。
そのため、ナチュラルワインには、見慣れないほど濁りがあったり、澱がたくさん沈殿していたりするものもあるのですが、時間をかけて樽やタンクの中でじっくり濁りや澱を下げて瓶詰めするなど、ろ過や清澄を行わなくても、自然な形で澄んだきれいなナチュラルワインを仕上げる造り手もたくさんいます。

瓶詰

ナチュラルワインは、上記のような過程を経ているので、ワイン自体が安定して落ち着くまでにゆっくりと時間をかける必要があります。生きた酵母や澱の名残が含まれたワインは瓶詰めされた後もゆっくりと変化しています。
極端にその量が多かったり、酵母のえさとなる糖分が多く残っていたりすると、まれに再発酵の可能性もありますが、そういった大きい変化ではなく、味噌がゆっくりと熟成していくように、ナチュラルワインもそれぞれの自然なペースで落ち着かせてあげることが、よりいい状態でナチュラルワインを楽しむ秘訣のひとつとも言えると思います。

ディオニー 遠矢さん

遠矢 敬宏(ディオニー株式会社)

偶然飲んだワインがおいしかったことから興味を持ち、ワイン専門店で勤務。さらに現地のワイン造りを学びたいと思い2011年にフランス・ロワールへ。そこで出会った醸造家の新井順子さんのワイナリー「ドメーヌ・デ・ボワルカ」で研修生としてワインの生産の仕事に携わる。帰国後は、ワインを提供するレストランでソムリエをしながら、より生産者の近くで仕事ができるインポーターの仕事を目指しディオニー株式会社へ入社。現在は、営業として働きつつ、ナチュラルワインの理解を深め、より気軽に楽しんでもらうために活動中。

この記事は、2021年11月、ビオ・マルシェの宅配で開催してきたオンライン講座「個性をたのしむ はじめてのナチュラルワイン」より、ナチュラルワインの基礎知識をまとめて、ご紹介しています。

 

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