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ナチュラルワインの基礎知識 その1~ナチュラルワインとは?自然派、オーガニック、酸化防止剤無添加との違い

オーガニックワイン

最近、お店や雑誌で「ナチュラルワイン」という言葉をよく見かけるようになりました。そのほか、「オーガニックワイン」や「自然派ワイン」、「酸化防止剤無添加」など色々なキーワードがあって、どれも身体や環境に良さそうなイメージがありますが、どのような違いがあるのでしょうか?

今回は、京都のワインインポーター・ディオニー株式会社の遠矢さんに、ナチュラルワインの基礎知識を教えていただきました。お店で納得できるナチュラルワインを選びたい、知識を深めてナチュラルワインをもっと楽しみたい、という方におすすめです。

ナチュラルワインとは?

ナチュラルワインとは、有機栽培など化学肥料や除草剤・農薬などに頼らない栽培方法で育てたブドウを、酸化防止剤などの化学的な添加物を極力使用せずに醸造して、瓶詰めした(orワイン造りをおこなった)ワインのことを言います。

ナチュラルワインには、統一された明確な定義や制度は現時点ではありません。最近、フランスでは、「ヴァン・メトード・ナチュール(Vin Méthode Nature)」というナチュラルワインの公的な認証制度が定められ(現在試用期間中)、認証の入ったナチュラルワインを少しずつ見かけるようになってきました。

それでは、今、一般的にナチュラルワインと呼ばれているお酒は、一体、どういうものなのでしょうか。オーガニックワイン、自然派ワインといった他の呼び方との違いについて、大まかに整理してみました(下記の図)。

オーガニックワイン、酸化防止剤無添加ワイン、自然派ワインとの違いは?

ナチュラルワインのカテゴリー

オーガニックワイン

「オーガニック」は、日本語だと「有機」、フランス語では「ビオロジック」。すべて有機栽培を指す言葉です。「オーガニックワイン」「ビオワイン」と表示されている場合は、有機栽培のブドウを使って造られたワインという意味になります。

バイオダイナミクスワイン(ビオディナミワイン)

「バイオダイナミクス」は、フランス語で「ビオディナミ」。人智学者ルドルフ・シュタイナーが1924年の農業講座で提唱した農法に従ってブドウを栽培しています。惑星の位置や月の満ち欠けに対応して示された暦(ビオディナミカレンダー)に従って農作業を行ったり、様々な役割を持つ「プレパラシオン」と呼ばれる様々な役割を持つ有機肥料(調合剤)必要に応じて使用したりします。そうして栽培されたブドウを使用したワインということです。

ここで気をつけたいのは、ここまでは、ワインの原料となるブドウの栽培の話であることです。「オーガニックワイン」「バイオダイナミクスワイン」とは、オーガニック栽培、バイオダイナミクス栽培されたブドウを使ったワイン。あくまで原料であるブドウの栽培方法に限った話で、その先にある醸造の部分には触れられていません。オーガニックというフレーズから、ワイン造りもナチュラルな方法が採られているように思えますが、必ずしもそれだけではないということです。
ちなみに、Demeter(デメーター)というバイオダイナミクスの認証機関の認証を受ける際には、ワイン醸造における酸化防止剤として使用される亜硫酸塩の添加量も制限されています。
そして、オーガニック栽培やバイオダイナミクス栽培という手法をとるワイナリーが、同様の感覚でよりナチュラルな手法でワイン造りをすることももちろんあります。

酸化防止剤無添加ワイン

こちらは先ほどとは反対に、オーガニック栽培やバイオダイナミクス栽培を行っていなくても酸化防止剤を使っていなければ「酸化防止剤無添加」と呼ぶことはできます。酸化防止剤を添加しない代わりに、別の手段で酸化を防ぐこともあります。
もちろん、
「添加物を使いたくない」、「よりナチュラルな状態でワイン造りをしたい」という目的で酸化防止剤を添加しないワイナリーもあります。

ヴァン・ナチュール

英語に直せば「ナチュラルワイン」となるこの呼び方を、ディオニーでは「オーガニックやバイオダイナミクス、または無農薬などで栽培されたブドウを添加物やその他の人為的な介入を極限まで減らして醸造されたワイン」と位置づけています。ここはインポーター等によって使い方が異なるため、注意して頂きたいと思います。

具体的には、培養酵母の添加や補糖、濾過や清澄、そして酸化防止剤の添加などを行わずにワイン造りを行います。

そのため、厳密にヴァン・ナチュールと呼ぶことができるワインはほんのひと握りです。また海外から輸入をする際には、船に揺られたストレスなどでワインが不安定な状態になってしまうこともあるため、到着後に数カ月、長いと2~3年温度管理された倉庫で落ち着かせなければならないこともあります。

自然派ワイン

最後に、「自然派ワイン」です。この呼び方にも明確な規定はなく、混然一体としています。いままでご紹介した「オーガニックワイン」「ビオディナミワイン」「酸化防止剤無添加ワイン」「ヴァン・ナチュール」のすべてが含まれているうえに、「自然派」という語の雰囲気をキャッチフレーズとして使用して、内実が伴わない場合もあり得ます。ナチュラルワインのイメージを端的に示してくれるフレーズですが、そういった状況のため、ディオニーではあまり使用しません。

ここまでいくつかご紹介しましたが、一般的にナチュラルワインという名称を使うときは、オーガニックワイン、ビオディナミワイン、酸化防止剤無添加ワイン、ヴァンナチュール、自然派などを含めた全体を示すものとして使われていることが多いと思います。冒頭で紹介したナチュラルワインの定義はインポーター・ディオニーが考えるもう少し限定された「ナチュラルワイン」ということになります。

ナチュラルワイン

ナチュラルワインの味わいの特徴は?

比較的安価で大量に生産されるワインは、有名なブドウ品種で、品質的にも安定した、万人受けする味わいを目指すため、画一的な味になりがちです。
一方、ナチュラルワインは、その土地の個性を反映したブドウを育てます。ワイン造りでは、人為的な介入を極力避けて発酵や醸造を行うため、ブドウ品種や環境のキャラクターが出た個性的な味になります。普段からナチュラルワインを良く飲む方の中には「ブドウの味がする」という言い方もされます。ブドウからできているのだから当たり前のような話ですが、ワインを飲んで「ブドウだ!」と感じたことのある方は意外と少ないのではないでしょうか?同じ生産者の同じ名前のワインであっても、その年ごと、時にはボトルが違うだけでも様々な表情を見せる自然なワインをぜひ味わってみてください。

ディオニー 遠矢さん

株式会社ディオニー 遠矢さん

偶然飲んだワインがおいしかったことから興味を持ち、ワイン専門店で勤務。さらに現地のワイン造りを学びたいと思い2011年にフランス・ロワールへ。そこで出会った醸造家の新井順子さんのワイナリー「ドメーヌ・デ・ボワルカ」で研修生としてワインの生産の仕事に携わる。帰国後は、ワインを提供するレストランでソムリエをしながら、より生産者の近くで仕事ができるインポーターの仕事を目指しディオニー株式会社へ入社。現在は、EC事業部でナチュラルワインと共通する食品のオンラインモール「タベルとミンナヴィレッジ」の立ち上げに携わりつつ、ナチュラルワインの理解を深め、より気軽に楽しんでもらうためのナチュラルワイン教室の開催を準備中。http://www.diony.com/

この記事は、2021年11月、ビオ・マルシェの宅配で開催してきたオンライン講座「個性をたのしむ はじめてのナチュラルワイン」より、ナチュラルワインの基礎知識をまとめて、ご紹介しています。

「参考文献」
藤原辰史. ナチス・ドイツの有機農業—「自然との共生」が生んだ「民族の絶滅」〈新装版〉. 柏書房, 2012.978-4-7601-4152-4
大橋健一. 自然派ワイン. 柴田書店, 2004.

ナチュラルワインの基礎知識

その2 ~ブドウの栽培と醸造の違い

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