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ナチュラルワインならではの造り方 その1~白ワイン、オレンジワイン編

ナチュラルワインのおいしさの理由

オレンジワイン

これまでの3回に渡り、ナチュラルワインとはどんなものか、どうやって造られているか、どんな分類があるのかといった部分をお話ししてきました。

その内容から、お店に並んでいるワインが「有機栽培など化学肥料や除草剤・農薬などに頼らない栽培方法で育てたブドウを、酸化防止剤などのや化学的な添加物を極力使用せずにワイン造りをおこなったワイン」であることは、ある程度見分けることができるかもしれません。

ですが、ナチュラルワインのインポーターである私は、「オーガニック認証」や「酸化防止剤無添可」という手段を重視しすぎない方が良いと考えています。

例えば、印象的で、オリジナリティーに溢れていて、おいしいナチュラルワインに出会った時、その味わいの理由は「オーガニック」だからでしょうか?「酸化防止剤無添加」だからでしょうか?

ナチュラルワインのおいしさは、ひとつの手段では決まりません。ブドウが生まれる畑の気候風土、ワイン造りの環境、そしてブドウを育て、ワインを造る人の個性、そして最後にワインを飲む人の感性や気分も。様々な要因が繋がってナチュラルワインの味わいは出来上がるのです。

ナチュラルワインのおもしろさは、その多様性にあります。「オーガニック」や「酸化防止剤無添加」はあくまでもそういったものがよりワインに映し出されるようにする方法のひとつでしかないのです。ですから、ここからは、様々なナチュラルワインが具体的にどうやってできていくかをご紹介していこうと思います。

ワインの色はどこから来ている?黒ブドウでも白ワインが造れる?

ナチュラルワイン

さて、ワインの色とはどこから来ているのでしょうか。

黒(赤)ブドウだから赤ワイン、白ブドウだから白ワインというのは簡単ですが、ご存知のように赤ワインも白ワインも色あいは様々です。例えば、マスカットのような皮がグリーンやイエローのブドウであれば、絞った果汁も同様の色になるでしょう。

一方で、巨峰やデラウェアのような黒ブドウの場合、絞ったとたんに赤ワインの色になっているわけではありません。そして、黒ブドウの果肉が黒い(赤い)とも限りません。私たちが赤・白と判断しているワインの色は、主に果皮などに含まれる色素がどれだけ抽出されているかで決まります。ですから、極端な言い方をすれば、白ワインとは果皮の色を抽出しないワインと言えます。白ブドウだから、白ワインとは必ずしも言えないのです。

黒ブドウから白ワインを造ることも可能ですし、そうやって造られるワインもあります。そうすると赤ワインは、果皮からしっかりと色を抽出したワインということですね。

では、白ワインとオレンジワイン、実際にどうやって造られているかを見ていきましょう。

ワイン造りの基本

まず始めに知って頂きたいのは、ここで紹介するのはあくまでも一例で、必ずしもナチュラルワインの造り方はこの通りではないということです。産地や造り手、様々な状況によって細かい違いがたくさんあります。

これからご紹介するいくつかの例を踏まえて、実際にワインを飲むときに想像を巡らせて頂けたら、さらにワインを楽しむきっかけになるのではないかと思います。

白ワインの造り方

まずは白ワインはどうやって造られるか。ワイン造りとしては、下図のようにブドウを収穫後すぐに(少し時間を置く場合もあります)プレス機で絞り、果汁と果皮や種(搾りかす)を分離します。その果汁のみをタンクや樽に入れ、発酵させるのです。ですから、黒ブドウからでも白ワインを造ることもできます。

白ワイン造り行程

色素の多い果皮は、色素が移らないうちにワインになる果汁とは別にされているのです。その状態で発酵した果汁は、発酵や熟成による色の変化以外では、色が濃くなることはありません。

オレンジワインとは?

そしてオレンジワイン。ワインの色のオレンジを意味する名前ですが、もちろん柑橘のオレンジを使うことはありません。(ワインのイベントなどで時折聞かれるので、念のため)

先に述べた通り、オレンジワインは、白ワイン造りでは分離されてしまう果皮や種を果汁と一緒に発酵させるのです。発酵期間中に果汁と果皮や種が一緒に混ざることで、皮に含まれる色素、タンニン(種にも豊富です)などが果汁に移り、オレンジ様の色調が生まれるのです。

オレンジ色の濃さは何で決まる?

上の写真を見た方の中には、もしかしたら「私が飲んだオレンジワインはここまでオレンジ色じゃなかった!」という方がいらっしゃるかもしれません。

その通り。私たちが輸入しているオレンジワインの中にも、外見は白ワインとほとんど変わらないものもいくつもあります。同じ白ブドウでも、果皮の色はまちまちです。黄色が強いものも、緑が強いものも、果皮が厚いものも薄いものもあります。なので、品種によって色の出方は異なるということもありますし、もうひとつ大事なポイントは、果汁と果皮や種を一緒にしておく期間の長短です。

スキンコンタクトとマセレーション

白ワインは、ブドウを破砕してすぐに圧搾をして、果汁と果皮を分けてしまうのが一般的ですが、果汁と果皮や種を一緒に漬け込んでおく方法を「スキンコンタクト(仏語:マセラシオン・ペリキュレール)」と言います。その期間は圧搾前の数時間から数日程度で、主に果皮に含まれる香り成分を果汁に移す目的で行われます。

一方、オレンジワインは、それ以上、時に数か月に渡って果皮や種と果汁を漬け込み造られます。また、「マセレーション(仏語:マセラシオン、日本語:醸し)」という言い方もあり、こちらは主に赤ワインを醸造する際、破砕したブドウの発酵中に、果皮と種も一緒に漬け込まれて、色素やタンニン、香り成分が抽出される工程を指します。

「スキンコンタクト」は白ワインの発酵前で「マセレーション」は赤ワインの発酵中という感じなのですが、オレンジワインのように数週間~数か月の長いスキンコンタクトをするとその間発酵は始まっていると考えられます。

ということで、オレンジワインとは「通常の白ワインより長いスキンコンタクトをしたワイン」もしくは「赤ワインもしくはそれ以上に白ブドウで長いマセレーションをしたワイン」ということになります。

オレンジワインの味と特徴

厳密に「〇日間以上スキンコンタクト(マセレーション)をすればオレンジワイン」という規定がないため、少しでも白ブドウをスキンコンタクト(マセレーション)をしているワインは、オレンジワインといってしまいがちでもあるのですが、そこはオレンジワインとしての特徴を持ち合わせているかどうか、造り手がオレンジワインとしてワイン造りをしているか、が重要です。

オレンジワインの特徴は、白ワインより濃いめのオレンジ色~アンバー色(先ほど触れたように白ワインと変わらない程度のこともあります)、果皮や種に含まれる苦み成分タンニンや香り成分が白ワインより多く抽出されるので、渋みがあり、アロマも華やかになりがちで、紅茶やフレーヴァーティのような風味を持つこともあります。

ナチュラルなワイン造りの場合

白ブドウ

少し長くなりましたが、ここまではナチュラルワインに限った話ではありません。オレンジワイン=ナチュラルワインというイメージもあるようですが、今見てきたようにオーガニックでブドウを栽培しなくても、発酵を自生酵母で行わなくても、添加物を避けなくても、オレンジワインを造ることはできます。

では、ナチュラルワインの生産者たちはどうしているのか?

ナチュラルな白ワインの造り方

白ワインの方はわかりやすいですね。
ブドウは、農薬や化学肥料に頼らず、畑の個性を生かして栽培したものを使います。発酵においても培養酵母や添加物をさけて、自生酵母にを使い、極端なろ過や清澄(卵の卵白などを使いワイン中の不純物を除去する作業)をせずにワインを造る。

どこまでがナチュラルかというのは非常に難しいのですが、例えば、「収穫したブドウを冷凍庫で凍らせて人為的に糖度の高い果汁を得る」とか、「発酵タンクの温度を極端に上げて下げして、発酵をコントロールしたりなど、気候風土や文化などの自然な範囲を超えるようなことはしない。などという感じでしょうか。

ナチュラルワインでも、発酵が健全に進むように必要であればタンクを温めたり、冷やしたりはすることはありますし(もちろんしない人もいます)、ワインが酢になるリスクがあれば酸化防止剤を添加することもあります(もちろん添加しない人もいます)。なにもかもが野生的な野放図なままでいるのが、ナチュラルワインではないのです。

少し脱線しました。

8,000年前のワインはオレンジワイン?

クヴェヴリ
アンフォラ

クヴェヴリ(アンフォラ) ジョージア(左)、フランス(右)

ワインの起源は8,000年前、ジョージアのあるコーカサス地方にあります。最初期のワインは、収穫したブドウをそのまま甕に詰め込み、果皮も種も果肉も一緒くたに発酵していました。そうしてできたワインは、白ブドウではあっても、色は現代の白ワイン様ではなく、にごりのあるオレンジ色をしていました。

素焼きの甕「クヴェヴリ」を使ったワイン造りは、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。ジョージアには、今でもこの方法でワイン造りを行う造り手がいます。

そして、醸造技術も発達した現代において、それにヒントを得てワイン造りをはじめた造り手が出てきたのです。素焼きの甕(イタリアやフランスでは「アンフォラ」と呼ばれます)で、ナチュラルワインのフィロソフィーで栽培された白ブドウを、果皮と種ごと発酵させワインにする方法です。

このように、ナチュラルなワイン造りとは、技術が発達する前に行われていたワイン造りを見直すことでもあります。歴史のあるオレンジワインとナチュラルワインの原点回帰的な部分はとても親和性が高かったのです。こうして造られているのが現代のナチュラルなオレンジワインなのです。

ナチュラルワインをもっと楽しむための料理

BBaronne-famille1

なかなかややこしいお話が続きましたが、ナチュラルな方法で造られた白ワインとオレンジワインの味わいの特徴と一緒に食べたい料理を少しご紹介します。

ナチュラルな白ワインには、旬の有機野菜をシンプルに

肥料や農薬に頼らないで育てられ、しっかりと熟したブドウは、エキスが豊かで土壌の様々な特徴を反映しています。そして自然な発酵には、時間をかけて多くの酵母が関わり、そこで生み出される風味はとても複雑です。出来上がったワインは、エキスは豊かなのにピュアで飲み心地良く、添加物やろ過をできるだけ避けているため、うまみが感じられます。

ナチュラルな白ワインは、品種や産地によってまったく雰囲気が異なるためひとくくりにするのは難しいのですが、あえて選ぶとしたら、同じようなフィロソフィーをもったオーガニックなど季節の野菜の風味を生かしたシンプルな料理が良いと思います。この初夏の時期ですと、たけのこがあればもちろん。そら豆をシンプルに塩茹でや、茹でたホワイトアスパラガスにお好みで自家製マヨネーズを。ごぼうのかき揚げやきんぴらも少し辛味があってもとてもおいしいです。

ナチュラルなオレンジワインなら、風味や香りが強い食材にも負けない

先ほども述べたように、果皮からの香りが豊かです。フレーヴァーティやライチなどフローラルな香り、エキスは白ワインと同様豊かで、後半に紅茶のタンニンや焼きリンゴのようなニュアンスが残ることもあります。こちらも多様な造り手と産地がありますので、一概には言えませんが、素材の旨味を引き立ててくれる存在です。

オレンジワイン発祥の地ジョージアではヒンカリという大きめの小籠包のような料理があります。鶏肉や豚肉の脂と相性の良い茄子や白菜。牛や豚肉にニラをたっぷり使ったギョウザなどに、パクチーなど香草を加えても、オレンジワインは風味が消えることなく寄り添ってくれると思います。

抜栓したワインは、いつまで飲めるの?

ナチュラルな白ワインとオレンジワインは、抜栓後も比較的長く楽しめることが多いかと思います。酸化防止剤を使用してない場合も、ポテンシャルの高いブドウをじっくりと発酵させたワインは、ゆっくりと酸化しながらも、風味を失わないと感じることが多いのです。(もちろん、中にはみんなで数時間以内にすぐ飲んでしまった方が楽しめるワインもあります)

特にオレンジワインは、果皮と種との接触が長くタンニンが多いためか、抜栓後1か月後でもおいしく楽しめるワインもあります。色々と試してみてください。

さて、次回ですが、赤ワインへ行く前に今回と同じ白ブドウを主に使って造られる、スパークリングワインについてお話します。

ワイン造りの違いと、ナチュラルなスパークリングワインとはどんなものか。いくつかの事例と共にご紹介いたします。お楽しみに。

 

ディオニー 遠矢さん

遠矢 敬宏(ディオニー株式会社)

偶然飲んだワインがおいしかったことから興味を持ち、ワイン専門店で勤務。さらに現地のワイン造りを学びたいと思い2011年にフランス・ロワールへ。そこで出会った醸造家の新井順子さんのワイナリー「ドメーヌ・デ・ボワルカ」で研修生としてワインの生産の仕事に携わる。帰国後は、ワインを提供するレストランでソムリエをしながら、より生産者の近くで仕事ができるインポーターの仕事を目指しディオニー株式会社へ入社。現在は、営業として働きつつ、ナチュラルワインの理解を深め、より気軽に楽しんでもらうために活動中。

この記事は、2021年11月、ビオ・マルシェの宅配で開催してきたオンライン講座「個性をたのしむ はじめてのナチュラルワイン」より、ナチュラルワインの基礎知識をまとめて、ご紹介しています。

【連載】個性を楽しむ はじめてのナチュラルワイン

・その1~ナチュラルワインとは?自然派、オーガニック、酸化防止剤無添加との違い
・その2 ~ブドウの栽培と醸造の違い
・その3~ナチュラルワインの選び方(ラベルの見方、世界の認証制度と酸化防止剤の規定)

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