ナチュラルワインならではの造り方 その2~スパークリングワイ...
2023.8.11
京都のワインインポーター・ディオニー株式会社の遠矢さんに、ナチュラルワインの基礎知識を教えていただきました。お店で納得できるナチュラルワインを選びたい、知識を深めてナチュラルワインをもっと楽しみたい、という方におすすめの記事の3回目は、「ナチュラルワインの選び方(ラベルの見方、世界の認証制度と酸化防止剤の規定)」です。
ナチュラルワインの基礎知識その1、2では、ナチュラルワインの種類やブドウの栽培と醸造についてご紹介しました。ここでは、実際にワインを選ぶ際にヒントのひとつとなる認証について、その中から代表的なものを4つご紹介します。
Euro leaf (ユーロリーフ)は、EUのオーガニック認証マークです。認定された検査機関によってオーガニックであると認定された製品にのみ付けることができ、厳格な生産、加工、輸送、および保管要件を満たしていることを示しています。ロゴを表示できるのは、100% オーガニックの製品、加工製品の場合は少なくとも95%のオーガニック成分が含まれ、残りの5%が厳しい条件を満たしている場合のみです。EUで販売される包装済み有機食品には、このロゴの表示が義務付けられています。
AB(Agriculture Biologique)は、フランスが1981年に制定した認証です。ABは「Agriculture Biologique」の略で、「有機農業」という意味。EUにおけるオーガニックの枠組みに加えて、INAO(国立原産地名称研究所)および農業・食料省によって定義された規定があり、少なくとも1年ごとに検査を受けています。AB ロゴは 1985 年から使用され、高い評価を得ていますが、製品への使用は任意です。
ECOCERT(エコセール・エコサート)は、世界最大クラスのオーガニック認証機関です。1991年にフランスで設立され、上記のユーロリーフや下記のデメテールなど各種の認証を行っています。エコセール自身の認証では、様々なオーガニック製品について、気候と環境保護、土壌肥沃度の保全、生物多様性の保全、自然循環と動物福祉の尊重、化学・合成品の未使用、GMO(遺伝子組換え作物)がないこと、消費者に対する透明なラベル表示などを保証しています。
DEMETER(デメテール・デメター)は、バイオダイナミクス農法で生産されたことを保証するドイツの認証団体です。ルドルフ・シュタイナー博士の農業講座のバイオダイナミクス農法を実践している団体で、世界で最も厳しいオーガニック農法基準ともいわれています。バイオダイナミクスの製品を表す言葉として使用できるのは、DEMETERのみに限られています。バイオダイナミクスに関する規定はもちろん、社会的責任の基準についても提示されています。
出典(上図)
https://www.vinsnaturels.fr/design/visuels/jp_2022_le_vin_naturel_v2.jpg
こちらは、ワインを醸造する際に使われた添加物と醸造方法の図です。
一番左から慣行的な造りのワイン、瓶の中に使われることのある添加物が書かれています。下の数字は1リットルあたりに含まれる総亜硫酸の量(白ワイン-赤ワイン)です。Bio, Biodynamieと右に行くほど、使われる添加物と総亜硫酸の量は減り、Naturelでは添加物は一切使われません。その中でも、「ヴァン・メトード・ナチュール」は2020年からINAO(フランス国立原産地名称研究所)が公式に認可した呼称で、今はまだ市場で見ることは稀ですが、ワインの醸造方法にもナチュラルな方針を定めたものとして注目されています。
総亜硫酸の量については、「ヴァン・メトード・ナチュール」の中でも30mg/lの添加を認めるものと、一切添加しないもので分けられています。
他にワイン醸造方法を認可する呼称には「アソシエーション・デ・ヴァン・ナチュレル」と「ヴァン・サン」がありますが、ワイン造り中の代謝物としての亜硫酸以外は一切認めておらず、「ヴァン・サン」に至っては、その造り手のすべての生産量、すべてのヴィンテージにおいて亜硫酸無添加という、とても厳しい条件を定めています。
亜硫酸は、酸化防止剤として知られていますが、望まない酵母や微生物が増えることを防ぐなどワインを安定させる役割があり、数千年前から硫黄で容器を燻すなどの形で使われてきたものです。ナチュラルワインの造り手の中には、火山から採取された固形の硫黄で樽を燻蒸する造り手もいます。
添加物を極力控えたいというのは、ナチュラルワインの造り手たちも同様ですが、「ヴァン・サン」に加わっている造り手が20にも満たないことからもわかるように、一切亜硫酸を添加せずにワインを造ることは非常にハードルが高く、オーガニック農法や自生酵母による醸造を行うナチュラルワインの造り手でも容易なことではありません。
とはいえ、ナチュラルワインを志向する造り手たちのワインには、必要最小限の亜硫酸しか使用されていないと考えてよいと思いますので、そこだけに固執せず、造り手の哲学やキャラクター、産地の個性などからワインを選んでいただけたらと思います。
ナチュラルワインに関する知識がなくても、魅力的な造り手の話や行ってみたい産地や好みのラベルなどから辿っていくことで、少しずつ世界が広がっていくのが、多種多様なナチュラルワインの楽しみのひとつだと思います。
※参照
フランス農業・食料省:https://agriculture.gouv.fr/
INAO(フランス国立原産地名称研究所):https://www.inao.gouv.fr/
Agence Bio:https://www.agencebio.org/
Ecocert:https://www.ecocert.com/fr/home
Demeter-International:https://www.demeter.net/
VINSNATURELS:https://www.vinsnaturels.fr/index.php
株式会社ディオニー 遠矢さん
ワインに興味を持ちワイン専門店で勤務。さらに現地のワイン造りを学びたいと思い2011年にフランス・ロワールへ。そこで出会った醸造家の新井順子さんのワイナリー「ドメーヌ・デ・ボワルカ」で研修生としてワインの生産の仕事に携わる。帰国後は、ワインを提供するレストランでソムリエをしながら、より生産者の近くで仕事ができるインポーターの仕事を目指しディオニー株式会社へ入社。現在は、営業として働きつつ、ナチュラルワインの理解を深め、より気軽に楽しんでもらうために活動中。
この記事は、2021年11月、ビオ・マルシェの宅配で開催してきたオンライン講座「個性をたのしむ はじめてのナチュラルワイン」より、ナチュラルワインの基礎知識をまとめて、ご紹介しています。