年末年始のごちそうをお手軽に、ビオ・マルシェの年末・2025...
2024.11.1
11月下旬、山梨県にある黒富士農場の加工場へ訪問しました。今回は、黒富士農場の「有機平飼いたまご」をたっぷり使ったバウムクーヘン「有機ばうむ」の製造現場に密着取材してきました。
目次
「日本の有機畜産を応援したい」から始まった加工品の開発・製造
黒富士農場があるのは、山梨県甲斐市。山梨百名山に名を連ねる3,000m級の山々に囲まれた、標高1,100mの場所にあります。冬は寒いものの、夏はとても涼しいので、暑さが苦手な鶏たちにとっては過ごしやすい環境です。
この地で、日本で初めて有機平飼いたまごの生産に取り組んだ黒富士農場は、「日本の有機畜産を応援したい」という想いのもと、2020年に有機加工の認証も取得し、有機畜産物を使った加工品の開発・製造にも力を入れています。
加工品には、もちろん有機平飼いたまごを使っています。豊かな自然の中で、のびのびと育った鶏の卵を毎朝集荷し、養鶏場から1時間程離れたところにある加工場に運びます。
今回は、その加工場に伺い、国内初の有機JAS認証付きのバウムクーヘン「有機ばうむ」の製造現場を見せていただきました。
今回の取材では、「有機ばうむ」が焼き上がる様子を見学しながら、商品開発の道のりを伺いました。
元パティシエを含む約10名の従業員でアイデアを出し合い、また、他に試食いただいた方々の意見を取り入れながら、甘みの調整など試作を重ねたそうです。一番の特徴は、なんといっても「有機平飼いたまご」の使用量です。生地全体の43%相当量を使っています。卵の生産者だからこそ譲れない、卵の味わいを最大限に活かすべく、完成までに約1年半を費やしました。
有機JAS規格における有機加工食品では、原材料のうち5%未満は有機原料以外も許容されていますが、「有機ばうむ」は卵以外の原材料も全て有機原料という徹底ぶりです。
有機平飼いたまごの生産には、飼料や飼育環境など多くの基準が設けられているため、時間もコストもかかります。「せっかくの有機平飼いたまごを無駄にしないためにも、その他の原材料にもとことんこだわりました。」とお話いただいたのは専務の向山さん。油や砂糖など、一つ一つの原材料を吟味して試作し、最も良い仕上がりになるものを選んだそうです。
有機ばうむの製造は、朝7時頃から始まります。焼き上がった後、約2時間冷却し、カット・梱包までの作業があるので、ベースとなる生地作りは朝早くから取り掛かります。
まずは、卵黄、砂糖、バニラビーンズを混ぜ合わせた材料をミキサーに入れてかき混ぜます。数回に分けて流し込みながら、約30分。徐々に色が変わって、固形化していく様子が見られました。
かき混ぜた後のミキサーをのぞくと、30分前とは全く別物です。初めの液状と比べて3倍ほどに膨らみ、色も黄色から白へと変わっています。このとき重要なのは、「卵黄の保管温度」とのこと。温度が高いと、かき混ぜたときにふんわりと膨らまず、焼き上がりにも違いが出てくるそうです。食品添加物を使えば、一定のコンディションを保つことができますが、「有機ばうむ」は食品添加物を使わない分、温度管理と、作る人の日々の感覚をもとに丁寧に生地作りを行っています。
卵黄のかき混ぜが終わったら、次は卵白を仕立てます。卵黄と卵白を別々に仕立てる「別立て方式」が「有機ばうむ」の製造工程の中でも大きな特徴のひとつです。
一般的には、膨張剤などを使うことでふんわりと焼き上げることが多いため、わざわざ手間をかけて別立て方式を行うことはあまりしないそうです。しかし、膨張剤を使わない「有機ばうむ」をふんわりしっとり仕上げるためには、メレンゲの力を最大限に引き出すことが必要です。そのため、2度に分けて仕立ててから、それぞれを混ぜ合わせて生地を完成させます。
卵黄と卵白は手作業で混ぜ合わせます。機械化できない、作り手の感覚だけが頼りになる繊細な作業です。そして、ここでも温度管理が重要とのこと。メレンゲは、時間が経って温度が上がるにつれて徐々に萎んでしまうため、素早く混ぜ合わせます。また、メレンゲが固すぎるとしっとり焼けないため、細かく混ぜないように気をつけながら、ふんわり感を保ったまま全体を混ぜ合わせます。大きな容器にたっぷり入った卵黄と卵白を混ぜ合わせるのは、なかなかの重労働です。
生地が完成したら、ようやく焼きの工程です。焼き上げには、380度の釜の中に3本のロールが回転するバウムクーヘン専用の焼成機を使います。1度に最大で3本分のバウムクーヘンを作ることのできる機械ですが、この日は2本分同時に焼くところを見せていただきました。
早速、1巡目の生地が流し込まれました。
流し込んだ生地をT字型のヘラで均等に伸ばしながら、ロールに浸して巻き付けます。
巻き付けた感触を確かめながら、生地にメレンゲを足して柔らかさを調整します。ロールは次から次へと一定の間隔で回転するため、手早く、均等に、生地を整えます。バウムクーヘンは、生地に空気が入ると修復ができないため、空気が入らないように慎重に伸ばさなくてはいけません。
始まると途中では立ち止まれないという緊張感の中、片時も目を離せない作業が15~16巡目まで続きます。高温に熱された釜に手を差し込みながらの作業は、熱さとの闘いです。
この日焼き上げを担当されたスタッフさんは、前職でパン屋さんの製造に関わっていた方。お話を伺うと、パン作りとバウムクーヘン作りは全く別物で、習得するのも難しかったそうです。焼き上げは、全スタッフさんができるわけではない、最も難しい工程です。
徐々に巻きが太くなってきました。
よく知っているバウムクーヘンらしい太さになりました。
きつね色に焼き上げて完成です。
2時間冷やして完成
ひと巻ひと巻丁寧に巻き上げて完成した「有機ばうむ」は、まさしく木の幹のようです。
釜から出したあと約2時間冷却してからカットします。その後、冷凍してお届けされます。
現在の「有機ばうむ」は甘さ控えめで、付属の有機アガベシロップで甘みを調整できるようになっていますが、今後、甘みを増してリニューアル予定とのこと。ちょうど試作中のサンプルを試食させていただきました。
最終調整中とのことでしたが、現在の「有機ばうむ」に比べると甘さをとても感じます。しかしながら、“たまご感”もしっかりと活かされた上品な甘さです。お子様向けには甘みがあるほうが人気なため、生地の甘さを増したとのこと。さらに、「有機ばうむショコラ」のチョコレートコーティングが好評ということで、プレーンの外側にも砂糖のコーティングを追加するそう。最終の出来上がりが楽しみです。
生地に有機チョコレートが練り込まれた、さらにひと手間加えられた商品です。外側のコーティングは2種類の有機チョコレートを絶妙なバランスで配合し、丁寧にテンパリングすることでくちどけの良い食感に仕上げています。このテンパリングという作業がまた難しいとのこと。チョコレートを温度調整して溶かし、均一に混ぜ合わせることで滑らかな口当たりに仕上げています。
※画像は現在の商品画像です。
冷凍でのお届けのため、解凍し常温に戻してからお召し上がりください。お好みにより電子レンジで10秒程軽く温めると香りが引き立ち、ふんわりとした食感になります。温めすぎないようにお気をつけください。また、別添の有機アガベシロップで味の変化を楽しみながらお召し上がりいただくこともできます。ティータイムにはもちろん、お酒との相性も良いです。
国内での有機畜産物はまだそれほど多くなく、有機畜産物を使用した有機加工食品はさらに希少なものです。有機業界の活性、環境保全、動物福祉の向上にも貢献したいと願う黒富士農場が作る「有機ばうむ」は、環境にも、人にも安心で「やさしさ」がたくさん詰まった商品です。大量生産できないからこそできるこだわりと、手作りのやさしい味わいを是非味わっていただき、食べることで応援いただければ嬉しいです。
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