ビオママクラブの料理本10選 オーガニックに暮らすママにおす...
2020.3.7
助産院の魅力は、ママが自分自身のお産をプロデュースできること。そんな「ママが主役」のお産に必要なのは、食事や睡眠など日々の習慣を整えること。家族に協力してもらうこと。そして、何より大事なのは「自分で産むんだ」という覚悟です。
今回は、ビオ・マルシェの宅配会員であり石井助産院(奈良県)院長の石井希代子先生に、助産院で産むこと、自然分娩の心構えなどについて、お話をお伺いしました。「自然分娩したいなら、準備9割」と語る石井先生のお話には、助産院で産みたいと考えるプレママだけではなく、全ての女性に役立つ気づきがたくさんありました。
石井助産院は、奈良県奈良市の閑静な住宅街にあります。「自然なお産」「自分らしいお産」ができるようにと、丁寧な妊婦検診から妊娠中の「両親学級」、産後産褥入院、産後ケアやワークショップと、妊婦さんに寄り添った様々なサポートをしています。入院中に提供している手作りの食事には、ビオ・マルシェの有機野菜や食材も使っていただいています。
自分自身が助産院で出産したことです。
私自身はもともと石川県出身で、地元の産婦人科病棟で勤務した後、結婚して奈良に移り住みました。そこで自分が妊娠したとき、産科の同僚に「助産院よかったよ」と勧められて、どんなところなんだろう、と主人と見学に行ったんです。そこの助産師さんに一目ぼれして、妊婦検診として通うようになりました。
助産院での検診は普通の産婦人科と同じ感じだったんですが、その後のケアがとても丁寧でびっくりしました。「お灸するよ」とか「安産するための準備するよ」とか、本当に手取り足取り教えてくれて、すごく大事にしてもらえたんです。勤務先の病院では、検査は流れ作業、聞きたいことがあっても遠慮して聞けない、というのをずっと見てきたので、目からうろこがボロボロ剥がれ落ちた感じでした。病院とは全く違うケアを受けて、私は助産院で産みたい!と強く思うようになりました。
初産では主人に、2人目の時は子どもにも立ち会ってもらいました。医療行為は全く無くて、自然なお産でした。スタッフの方がついてるから大丈夫!という気持ちで、産婦人科の先生がいなくても全然不安は無かったですね。出産後には、「産まされた」という感覚じゃなく、「自分の力で産んだ」という手応えがありました。医療に頼らず自分の力で産むしかない、産めたんだという自信が湧きました。
子ども2人とも助産院で産んで、さて職場復帰となったとき、これからもずっと母子と関わっていきたいと強く思いました。それで産科病棟には戻らず、助産院で働くことを決意したんです。続けていくのであれば地元が一番ということで、奈良市に石井助産院を開院しました。
私にとって、お産はこれまでの人生で一番大きな体験でした。その後の人生に自信がついたというか、変化があったと思うんですね。助産院を開院しようと思っちゃうくらいだから。
自分の出産のときは、「女王様のように、自分のやりたいようにやったらいいよ」って言われました。主人が背中さすってくれたり、お茶飲ませてくれたり。助産師は全然前に出なくて、主役はお母さんですよ、と。そういう意味で、全然管理されなかったです。自分がしたいお産を、ずっと後ろで支えてくれてる感じ。
ずっとついていてくれる。そういう安心感があったから、痛みがあっても耐えられたんだと思います。痛くても頑張れる、乗り越えられる。やっぱり、傍にいてくれる、肌に触れてくれるという安心感ですよね。そんなお産ができるのが助産院ならではと思います。
病院では、お母さん主体じゃなくなりますね。管理されてしまうし、あれこれ制限もされます。とくに、初めての出産だと、どうしていいかわからないですしね。その点、助産院なら、自分のお産をプロデュースしたい、という気持ちをかなえてくれる。それは、嬉しいことだと思うんです。
うちの助産院でも、良い出産をしてもらうことを何よりも大切にしています。お母さんが大事にされることだったり、もちろん妊娠前からも大事なんですが、出産が一番だと思うのでそこにフォーカスして、妊婦さんに「あなたはどうしたい?」って聞いて人間関係を築きながら、同じ方向を見て準備するようにしています。
もちろん、医療行為がどうしても必要という時もあります。だから、医療機関とも連携を取って、バックアップ体制をしっかりしておくことも大切です。皆でお母さんを見守っていく、という体制をつくっています。
今、産科でも面会が叶わず、孤独にお産を迎える方も多くいらっしゃいます。うちでは、同居している家族に限り、感染症対策をきちんとした上で立ち会いOK、としています。また、両親学級や育児サークルなども人数を制限して、感染症対策をきちんとした上で開催しています。
育児サークル(ベビーマッサージ)の様子
一番は、自分で産むという覚悟ですね。
助産院は、会陰切開も誘発や吸引分娩もできません。サポート以外、何もできないんです。お母さんの産む力を信じて手伝うだけです。お母さんが産み落としてくれる赤ちゃんを受けるだけ、みたいな感じです。
ですから「産ませて」という感覚で来られたら、助産院では無理です。ですので「自分自身の力で産むんだ、っていう覚悟を持って来てね」と言っています。
以前、吉村先生という有名な先生がいらして、「江戸時代だったら、みんなポンポン楽に産んでたよ。クーラーや自動車、スーパーやコンビニも無いので、よく動いて、粗食で、夜になったらさっさと寝て。身体は冷やさずちゃんと動かして温めて。皆そういう環境だから、多産だったんだろうね。」とおっしゃっていました。
今は便利になった分、あまり身体を動かさなくなりましたよね。夜遅くまでスマホ見て電磁波を浴びて、運動不足で睡眠不足。それでは自然分娩は無理です。そういう生活で自然分娩を望むのは、虫が良すぎるんです。努力が要るってことです。いつも「自然分娩するなら、準備9割」と言っています。出産直前にちょっとやるくらいじゃダメなんです。
初めての方には、まず面談をします。「自分で産むしかないの。どんなお産がしたい?」と聞いて、「助産院はやってもらうって気持ちではダメなんですよ。家族の方とも相談して、それでもよかったら電話ちょうだい」と話します。だから、それでも来る方は、ほぼ覚悟を決めてますね。ある程度は自分で努力しないといけない、という心づもりで来てくれています。
助産院で産もうというのは意識の高い方が多いから、ある程度自然な食事を心がけていたりとかしますけど、そうじゃない方もいます。だから、きちんと睡眠をとること、体を動かして体力をつけること、ちゃんとした食事をとること、そのあたりから指導をします。妊娠中から体つくりをきちんとやる。2~3時間ぐらいは歩ける体力は必要です。こういったことを、ご本人に気づいてもらうのが大切です。
はい。最近は出産も高齢化して、不妊治療をされている方も多いですよね。だから、まずは自分の体を整えるところからです。ストレスがかかってないか。自律神経が整っているか。生理がちゃんとしているか。そういう基本から見直していきます。最初から薬に頼るのではなく、自分の生活や仕事を見直して整えることが大事です。体を動かして、冷やさないようにする。午後10時から午前2時は、その日の身体のリセットをして次の日に備える身体をつくる時間帯。その時間はちゃんと休むことが大切です。お日さまにも当たらないといけません。そんな、昔だったら当たり前のことが出来てない人も多いんです。昼夜逆転の生活をしているとか、自分で何とかする前にすぐ薬を飲んでしまうとかね。
自分の体に目を向けて、自分の感覚をもう一回研ぎ澄ませてみるのも大事です。今は、電車に乗っていると、スマホを見ている人がほとんどですよね。私の時代はスマホなんて無いから、その時間に内観をしていました。あの人にこんなこと言っちゃって悪かったなとか、自分を見つめる時間です。今はそんな時間って少ないですよね。子育てにしても、子どもを見つめる時間がどんどん少なくなっていると思います。目の前で子どもが泣いていても、何でだろうってスマホで調べて。その場にいる子どもをよく見ていないというか。
でも、ほんとに自分の体の力を信じて引き出していけば全然イケる!それを知らないのはもったいないと思います。
やはり、家族の協力ですね。
うちの助産院でも、土曜日の両親学級を定期的に開催して、日常生活や食事の話をしています。出産を他人事と感じているご主人も多いですが、一緒に聞いてもらうと協力してくれるようになります。奥さんから言ってもなかなかピンと来なくても、第三者の私たちからだと理解してくれたり。そういう知識があるかどうかで全然違いますよね。家族で奥さんを支えていくという意味では、ご主人の協力はとても大切です。安心してお産を迎えるには、周りの協力が必要なんです。
立ち会ってもらえるというのは、やっぱり大きいですよね。話を聞くだけでもああ大変だなと分かるとは思いますが、その場の雰囲気を味わわないと分からない大変さというものがあります。それを一緒に味わった家族は、出産後の協力度も全然違うんじゃないかなと思います。
そうですね。やっぱり、立ち会い出産をしたいという方は多いです。ご主人が血を見るのが苦手とか、子どもに見せて大丈夫かな、とか心配する方もいらっしゃいますが、結局立ち会い出産をして後悔する方はいない。悩んでいたけどやっぱり良かった、といって同僚や友人に勧めるご主人も多いです。ご主人自身で赤ちゃんを取り上げたいという方もいらっしゃいました。これは普通の産科病院ではなかなか難しいと思いますが、なるべくかなえてあげたいです。
子どもも出産に立ち会っていて、お母さんの横で遊んでいたりするんだけど、「今から産まれるよ」と声をかけると寄ってきてちゃんと見てますよね。目の前で体験すると、自分もこうやって頑張って生まれてきたんだ、という自己肯定感がどんどん上がってくるようです。そういう気持ちと、お母さんありがとうという感謝の気持ちと。とてもいい笑顔をしますよ、その時は。そして、生まれてきた赤ちゃんの受け入れもとても早いんです。ずっと見てきてるから。赤ちゃんが生まれるということを、きちんと理解できるんです。
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前編はここまで。【後編】出産前後の食事では、薬膳を取り入れた助産院の食事、ママと子どもの食事で気をつけたいことなどをお話しいただきました。ぜひご覧ください。
奈良市 石井助産院 院長(助産師) 石井 希代子先生
プロフィール
平成元年 看護師免許取得
平成2年 助産師免許取得
医療法人社団和楽仁辰口芳珠記念病院産婦人科病棟、奈良県立奈良病院産科病棟、岡村産婦人科勤務を経て
平成14年 石井助産院開業 現在に至る