メニュー

有機手延べそうめんができるまで|国内でも数少ない製麺所「手のべ陣川」を訪ねて

夏の風物詩“そうめん”の季節が今年もやってきました。ビオ・マルシェの「有機手延べそうめん」は、その年に収穫された小麦を使用し、2〜4月の限られた期間に約1年分を製造します。今回は3月の製造現場に立ち会い、あの美味しい麺ができるまでの様子を取材してきました。

 

有限会社手のべ陣川(長崎県南島原市)

「有機手延べそうめん」を製造しているのは、長崎県南島原市にある「有限会社手のべ陣川」です。南島原市はそうめんの生産量全国第2位を誇る「島原手延べそうめん」の産地。その中でも、有機手延べ麺を製造できる製麺所は国内でもごくわずかです。先代が「食品の安全性」と「その製造現場を外部に見てもらうこと」の2点を重視し、有機認証を取得しました。

その後20年以上にわたり、有機原料がなく製造できない年でも更新を継続。そこには、食品づくりにおいて安心・安全をしっかり担保したいという強い想いがあります。

有機手延べそうめん

原料には、ビオ・マルシェの契約農家で栽培された有機小麦粉を使用し、仕込みから完成まで3日間、23段階の仕込み工程を経て作られるオリジナル麺です。つるっとしたのど越し、コシのあるもちっとした食感、口いっぱいに広がる有機小麦の風味で、人気の高い麺です。

「手延べ」とは、棒状にした生地に撚りをかけては延ばす工程を繰り返し、麺を細くしていく製法。同じ方向に何度も撚りをかけて延ばすことで、小麦粉のグルテン組織が緻密にきれいに並び、「手延べ」ならではの強いコシが生まれます。それに対して、「機械製麺」は、製麺機で薄く延ばし刃で切ってから乾燥させる製法。効率が良いというメリットがありますが、麺の延ばしが少ないため、グルテン組織にばらつきがでやすく、小麦の風味やコシが弱くなってしまいます。

 

限られた期間で作る理由

南島原の海

製造時期が2〜4月に限られている理由は、「塩」と「熟成」にあります。

手延べそうめんは工程の中で何度も熟成を繰り返します。熟成によって麺は柔らかくなり、小麦本来の美味しさが引き出されますが、進みすぎると延ばす際に切れてしまいます。そのため、塩の量で熟成の進み具合をコントロールします。

一般的なそうめんは、夏前まで製造されることが少なくありません。気温が高くなると熟成が進みやすいため、塩を多めに加えて調整します。しかし、有機小麦粉はだれやすい性質があり、もともと塩を多めに使用しています。その状態でさらに塩を増やすと、食味が落ちたり麺が固くなったりするため、夏前の製造ができません。

こうした理由から、「有機手延べそうめん」は、気温や湿度の影響を受けにくい2〜4月に限定して製造されています。

 

そうめんづくりは「原料7割、技術3割」

そうめんづくりは「原料7割、技術3割」と言われています。原料の状態が、コシや味など仕上がりの大半を左右するためです。

特に有機小麦は扱いが難しく、塩分量や熟成の進み方を細かく見極める必要があります。初日の仕込みでは、原料の状態に加え、現在と過去の天気・気温・湿度を踏まえて塩と水の量を決定。カレンダーを見ながら1〜2時間悩むこともあるそうです。

例えば…

・前日に風が吹いて乾燥している → 加水を多めに
・昼から雨予報 → 加水は少なめに
・気温が低い → 塩分を控えめに
・気温が高い → 塩分を多めに

このように環境を読み取りながら微調整していきますが、ここは経験により培われた感覚が頼りになります。

そして、23段階の仕込み工程のどこで不具合が出るかによって、原因が原料・水・塩・環境のどこにあるかを判断します。後半の工程は技術でカバーできますが、原料が悪い場合は初期段階で麺が延びず切れてしまいます。だからこそ、原料を見極める力と、それを活かす技術の両方が求められ、毎年緊張感を持って小麦と向き合っています。

 

小学生の時に家業を継ぐと決めていた

代表取締役社長 陣川 健吾さん

案内をしてくれたのは、二代目の陣川社長。
小さい頃から工場が遊び場で、小学生の時にはすでに「家業を継ぐ」と決めていたそうです。その夢を叶えるため、進路も自ら選び、広島で学び、大阪では鰹節会社に就職して経験を積み、家業を継がれました。

「小6の時にはもう地図ができていた。畑を作って、そこで育てた小麦でそうめんを作って、海外に持っていく。アメリカ、ヨーロッパ、中国にもっていって賞を取る。オーストラリアには広大な畑と製粉工場を作る。あとはどう実現するかだけ。まだ道の10%くらいしか見えてないけどね。」 そう話す表情は、今も少年のように輝いていました。

現在、「手のべ陣川」は韓国でそうめん専門店を10店舗展開。さらに横のつながりを広げるため、粉屋さんや油屋さんなど約30名を集めた食事会を年2回開催し、情報交換の場をつくっています。代を重ねるほど外部の情報が入りにくくなる中で、自社の商品をより良くし、新しい挑戦を続けるために欠かせない取り組みだそうです。社長の描く夢が少しずつ形になっていく様子に、こちらまで胸が高鳴りました。

 

3日間、23工程でつくる手延べそうめん

そうめんの仕込み工程は全23段階。そのうち熟成工程は計5回あり、麺を引き延ばす際は必ず行う大切な工程です。

こね → 麺圧1 → 切り回し → 麺圧2 → イタギ → 熟成 → ほそめ → 熟成 → こなし → 熟成 → 掛け巻き → 熟成 → 小引き → 熟成 → 大引き → ハタかけ → 1次乾燥 → 二次乾燥 → 小割り →研磨 → 選別 → 仕上げ → 結束・検査

ここからは製造工程に沿って、美味しさの秘密をご紹介します

◆一日目

こね

有機小麦粉と塩水を混ぜている様子

有機小麦粉に塩水を加えてこねます。使用する国産有機小麦粉は、強力粉(品種:ゆきちから)。一般的な小麦粉に比べて有機のものは水分量が多い傾向にあり、それも踏まえて配合を決めています。

 

麺圧1・切り回し

圧をかけ、麺を円盤状に形成している様子
形成された麺を、包丁で切り回している様子

麺に圧をかけて円盤状に形成し、小麦のグルテンを集めて組織を作ります。イメージとしては、足で踏んでコシを出す工程。圧の強さは小麦の種類によって調整し、中心の盛り上がり具合で圧のかかり具合を見極めます。十分に圧がかかったところで、包丁で切り回し、帯状にしていきます。

麺圧2

帯状の麺を機械にセットしている様子
押圧している様子

帯状の麺をさらに押圧し、グルテン組織を一方向に形成します。生地を平らにして、折り返して、上から押さえてを繰り返すイメージです。ここで麺のコシを決めていきます。通常圧は2回のところ、手のべ陣川では3回かけることで強いコシを生み出します。

 

イタギ・ほそめ

イタギ後の麺

イタギと呼ばれる工程で、薄い帯状の麺を網状に形成し、約1時間熟成します(1段階目)。その後、ほそめと呼ばれる工程で、網状の麺をさらに細くしていき、再度約1時間熟成(2段階目)。このとき、乾燥防止のため表面に植物油を塗布します。

こなし

麺に撚りをかけて延ばしている様子
こなし後の麺

麺に撚りをかけながらさらに細くし、約1時間熟成します(3段階目)。この撚りが手延べ技法の一番の特徴。同じ方向に何度も撚りをかけて延ばすことで、小麦粉のグルテン組織が緻密にきれいに並び、「手延べ」ならではの強いコシが生まれます。

掛け巻き

掛け巻きをしている様子

鉛筆ほどの細さになった麺を8の字状に綾掛けし、約3時間熟成させます(4段階目)。8の字にするのは、麺が棒からずれないようにするため。横から見ると、きれいに整列した麺が並び、繊細で丁寧な作業が伝わってきました。ここの工程は特に難しく、担当するのは専属の職人。工場内には機械の大きな音が響き渡りますが、その中でも麺は一本も乱れることなく、なめらかに延びていきます。

小引き

約10cmの麺を両端から引っ張り、40~50cmまで延ばした後、約3時間熟成します(5段階目)。

 

大引き

手で大引きを行っている様子
機械で大引きを行っている様子

大引きはまず手作業で行います。麺の両端を引っ張りながら、綾掛けした麺を二つの棒でさばき、一気に約1.5mまで延ばしていきます。熟成具合を確認し、問題なければ、その後は機械に通して大引きを行っていきます。均一に、そしてしなやかに延びていく麺の様子は、思わず見入ってしまうほどで、まさに職人技そのものでした。

ハタかけ

ハタかけをしている様子
ハタかけ後の麺

麺をハタにかけ徐々に引き延ばし、最終的に1.7~1.8mにします。一般的なそうめんと比べて、有機は短めだそうです。

一次乾燥

一次乾燥させている
選別作業

麺を天上扇で乾燥させます。昔は外で乾燥させていたそうですが、降灰があったことをきっかけに室内に移行。昔ながらの自然乾燥に近づけるため、工場の建築構造を「二重屋根構造」にすることにより自然風を取り入れ、「高床式」で湿度を逃がすことにより麺づくりにより良い環境にしています。この日は湿度72%、温度22度で、良い条件とのこと。麺が切れやすい上下の乾燥ムラをなくすことで、口当たり滑らかで均一な太さのそうめんが出来上がります。

同時に、木の棒を使用して不良品を取り除く選定作業を行います。一見綺麗に並んでいるように見えても不良品を見逃さない職人技に、丁寧なモノづくりを感じました。ある程度乾燥したら、一晩ねかせて二次乾燥へと進んでいきます。

◆二日目

二次乾燥

一晩寝かせた麺から下の棒を外し、水分13%以下になるまでさらに2~3時間乾燥させます。風に揺れるそうめんの光景は圧巻で、まるで白いカーテンのように美しく広がっていました。

小割り・研磨

カットした麺を束ねている様子

乾燥した麺を規程の長さにカットし、麺と麺をこすり合わせながら、麺の表面を研磨します。研磨前と研磨後で手触りを比べてみると、研磨前の若干のざらつきが研磨後にはつるつるになっていました。このひと手間が、口当たり滑らかでつるっとしたのど越しに繋がっています。

選別

選別している様子
規格外の麺を抜き取っている様子

規格外の麺(曲がり、太さ、くっつき等)を目視検査し、1本1本抜き取っていきます。この作業ができるのは限られた職人のみ。高い集中力と経験が求められます。

仕上げ

仕上げ後の麺

切断面の不揃いをカットして仕上げます。仕上げが終わると一度箱に入れて保管し、熱を冷まします。冷めていない状態で袋詰めした場合、熱がこもって油臭くなるそうです。

◆三日目

結束・検査

目視による最終検査の様子

金属探知機と目視により最終検査し、規定重量で結束します。流れるような作業で不良品のチェックと、束にして袋詰めする際に帯の端が裏にくるように調整します。

 

夏場はパスタの代わりとしてもおすすめ

最後に、おすすめの食べ方も教えていただきました。一番のおすすめは、やはりシンプルに茹でて氷水でしめる食べ方。つるっとしたのど越しとコシの強さをしっかりと感じることができます。また、お好み焼きやたこ焼きに加えると、もちっとした食感がプラスされるそうです。茹で時間が短いので、夏場はパスタの代わりとしてもおすすめです。

手のべ陣川のそうめんは、ベルギーの品評会で「ITI(Intenational Taste Institute)のTASTE AWARD」三つ星を継続して受賞。今年で9回目を迎えるなど、その美味しさは国内外で高く評価されています。丁寧な手仕事と、自然と向き合う繊細な技術から生まれる一筋のそうめん。ぜひこの夏、その美味しさを味わってみてください。

 

有限会社 手のべ陣川(長崎県南島原市)

代表取締役社長 陣川 健吾さん

島原手延べそうめんの製麺所。国内でも数少ない有機JAS認証の製麺所として、有機小麦を使った手延べそうめんを製造。伝統の技と丁寧なものづくりで、国内外から高い評価を受けています

オーガニックライフを
始めてみませんか?