【東京】「有機北里八雲牛のおはなし&国産有機牛のスペシャルラ...
2024.9.9
近年、共働き世帯が多くなり、多忙な生活のなかで、子どもも大人も一人で食事をする(個食)ことが増えています。さらに、好きなものだけを食べる(固食)、外食・惣菜が増えている(戸食)など、いわゆる「コショク」の問題が急加速しています。
そのような中、子どもたちの食環境を守るため、オーガニック給食を取り入れたいと考える保育園・幼稚園も増えてきています。とはいえ、食材調達や費用などさまざまな壁があり、オーガニック給食の導入に踏み出せない園も多いです。
岐阜県可児市・多治見市で4つの園を運営している「社会福祉法人 村の木清福会」は、子どもたちの食の問題にいち早く着目し、オーガニック給食を2年前より導入しています。今回、ビオ・マルシェスタッフが村の木清福会を訪ね、導入のきっかけ、オーガニック給食を実現するまでの経緯、導入後の効果など、貴重なお話しを伺いました。
「食に対しての価値観が、一瞬で変わりました」
そう話すのは、村の木清福会の理事長、大雅 峰宏(たいが みねひろ)さん。
今から5年ほど前、他の園との差別化を図りたいと考え、子どもたちのために何か新しい取り組みができないか摸索していたという大雅さん。
そんな中、参加したセミナーで講演されていた、食教育プランニングコーチの永原 味佳さんの話を聞き、感銘を受けたとのこと。「食育ってインパクトもそんなに強くないし、効果も良くわからない。オーガニックにも興味があったわけではなかったんです。でも、話を聞いて”これしかない!”と思いました」。
講演で特に印象的だったのが、りんごの木の話。永原さんは、「りんごの実を大きくしようと思って実にいろいろ与えても大きくなるわけがない。吸い上げる根っこや吸い上げるものが大事なんです」と話されていたそう。
大雅さんもちょうど、子どもたちの知力・体力など見えるところに目が向ける一方で、「最近の子どもたちって心が不安定な子が多いな」と気になりだしていたところでした。この話を聞き、子どもたちの知力や能力をりんごの実に例えるなら、子どもたちの心の根っこを育てること、まずは食が大切だと感じたそうです。
幼児食研究家として各地で食育指導をし、添加物・オーガニックにも精通している永原さんの指導のもと、オーガニック給食導入に向けて動き出しました。
食材は、有機認定された野菜や、手間ひまかけて作られた調味料に変更しました。調達先は、永原さんからの紹介で、ビオ・マルシェに依頼いただきました。「600食を作らなければならないので、食材を安定的に仕入れられるというのが絶対条件でした。オーガニックの野菜や調味料を安定供給できる、ビオ・マルシェにお願いしたのはそこが決め手です」。
導入にあたって大変だった点を尋ねると、「給食室の調理スタッフへの落とし込みがうまくできなかったこと」だと大雅さんは当時を振り返ります。
給食は、時間厳守。調理時間が限られるなか、効率重視でカット野菜や冷凍食品を使う園も多いそうです。そんな中、食材をオーガニックに変えたことで、それに合わせて献立や調理方法もすべて変える必要が出てきました。自然を生かして作る有機野菜は、サイズにバラつきがあったり、土付きで入荷することもあります。オーガニック給食にしたことで、調理スタッフの手間は以前よりもかかるようになりました。
(有機じゃがいもは皮ごと調理)
慣れない調理方法や献立の変更で、導入当初は苦戦し、辞めるスタッフも少なくなかったとのこと。最初の3か月ぐらいは、まず作り方に慣れて工程を覚えるために種類を絞り、5パターンぐらいのメニューを繰り返し回していました。全員が手探りのなか、試行錯誤の日々が続きました。
そこから、徐々にメニューを増やしていき、子どもたちの食べ残しが多いものはその都度改善を繰り返していきました。今では献立のバリエーションも増えて、新しいメニューもどんどん取り入れているそうです。
(左:事務長 井口さん、右:理事長 大雅さん)
気になる費用に関しても、オーガニックの食材に合わせた献立と調理方法の見直しにより、大幅に上がることがなく提供できているとのこと。事務長の井口さんは「”美味しい給食を届けたい”という調理スタッフの想いと努力のおかげで、良い形でオーガニック給食を提供することが出来ている」と話します。
村の木清福会が園で提供しているオーガニック給食のテーマは、KYOUSYOKU(キョウショク)。「身体・心・味覚の土台が出来上がる幼児期」に「共に食べる」ことを柱として、正しい食習慣を身につけることが目的です。また、アレルゲンとなる食材を極力使わないメニューにすることで、アレルギー児と非アレルギー児の隔てを無くし、〝みんなで食べる・みんなで感じる″共食を目指しています。
離乳食・普通食とも、玄米和食をベースにしたメニューです。ただし、子どもたちが違和感なく美味しい給食を食べられるように、人気の洋食や中華も取り入れています。また、化学的に処理された食材や、3大アレルゲン(卵・乳・小麦)はなるべく使わず、農薬が多く使われるフルーツなどの提供も控えています。肉や魚は月2~3回程度と少なく、大半は野菜を中心としたメニューです。
取材に伺った日のメニューは、ピラフ、かぶのクリーム煮、ひじき味噌ポテト。
ビオ・マルシェのスタッフも試食させていただきました。素材の味を生かした優しい味つけで、食べ応えのある美味しい給食でした。この日は野菜のみのメニューでしたが、子どもたちも美味しそうにパクパク食べている様子が、とても印象的でした。
「オーガニックの給食って味がうすくないの?」「野菜中心のメニューっておいしくないのでは?」など、最初は不安に思う保護者の方もいたそうです。
そこで、オーガニック給食導入にあたり、保護者の方への説明会兼試食会を実施。そのときに、おにぎりとお味噌汁を提供しました。お味噌汁は、だしの素などの化学調味料は使わず、野菜の味をしっかり引き出して作ります。試食した保護者の方々にも美味しいと好評で、オーガニック給食に理解いただくことができたそうです。
導入から2年経つ現在では、「子どものアトピー性皮膚炎が良くなった」「排便の時間が一定になった」「野菜きらいの子どもが園では野菜を食べるようになった」などの、嬉しいお声をいただいているとのこと。給食のレシピについても問い合わせがくるほど。
最近は、「KYOUSYOKU」への取り組みを理由に入園する方も増えているそうです。オーガニック給食は、今や園にとっての大きなアピールポイントの一つになっています。
オーガニック給食の導入をきっかけに、保育内容にも変化が出てきています。
園児がプランターで育てた野菜(ピーマン、トマト、ナス、とうもろこし、にんじんなど)を収穫して給食に入れたり、一人一つのバケツで稲を育てたりしています。
保育士さんからも様々なアイデアが出ていて、食育にもどんどん力を入れているようです。来年は、「子どもたちでみそづくりができたら」と考えているとのこと。さらに「将来的には、近くの畑を借りて野菜を栽培できたらよいのでは」など、やりたいことがどんどん膨らんでいる様子でした。
園の隣に昨年4月にオープンした「多機能型子育て支援施設Lulu」。保護者の方々の子育てサポート施設です。
園の情報発信力が弱く、入園までのハードルが高いという課題に悩んでいた大雅さん。「入園前の子どもたちや保護者の方には、村の木のことを知ってもらうための、情報発信の場所にもなっている。地域の方との信頼関係を作れる場所にしていきたい」と話します。
Lulu内にあるカフェでは、園児と同じランチが500円で食べられます。食の大切さを伝えたいとの思いで取り組まれているとのこと。地域の方にもオーガニック給食をアピールしていきたいと考えています。
オーガニックの食を園児だけでなく、保護者の方々にも利用いただけたら。そんな想いで今年1月からスタートするのが、ビオ・マルシェの宅配サービスとのコラボ企画「うけとるプラン」。保護者の方がビオ・マルシェの宅配で注文した商品を、Luluで受け取れるサービスです。お迎えのついでに、宅配で注文した有機野菜・オーガニック食品を持ち帰れます。送料無料などの限定特典など、ビオ・マルシェの宅配をお得に利用できます。
大雅さんは「ビオ・マルシェの商品を実際に見てもらうことで、園児がどんなものを食べているのかを知ってもらう機会になってほしい。保護者の方や地域の方も、手軽にオーガニックの食材を利用できるようになり、食の選択の幅が広がれば」と新たな取り組みへの期待を話します。
村の木清福会は、昭和25年に開園し、今年で72周年。開園以来、地域の方々に支えられ、保育事業に取り組んできました。今後について伺うと「100周年を目指し、これからも保育の枠にとらわれず、地域に寄り添いサポートしていく取り組みを行っていきたい」と話されていました。
取材を通して、給食にオーガニックを導入することの大変さを感じる一方で、それ以上のうれしい反応や効果も伺うことができました。ビオ・マルシェとして、これからもオーガニックの食材を安定してお届けし、園の取り組みをサポートできればと思いました。常に新たなことへチャレンジするスタッフの方々の行動力に感銘を受け、園児の笑顔に癒される1日でした。
(スタッフ 原)