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やさか共同農場さんに教わる オーガニックみそづくり2024を...
2024.2.29
2025年2月8日(土)、毎年恒例のイベント「オーガニックみそづくり」を、ハグミュージアム/大阪ガスにて開催しました。
講師は、ビオ・マルシェの「有機みそ」や「かんたんみそセット」を製造している島根県・やさか共同農場の代表、佐藤大輔さん。イベント当日は、全国的な寒波。島根県でも50~60㎝の積雪があったなか、大阪の会場までお越しいただきました。
やさか共同農場は、島根県西部の標高550mに位置する山間部にあり、厳しい自然環境のなかで有機農業を営んでいます。農場のある弥栄町(やさかちょう)は、人口約1,000人の小さな村。住民のほとんどが顔見知りです。約50年前、都市部から移住した人々が開拓し、化学肥料や農薬を使わない有機農業を実践してきました。
農場では、大豆や米、ほうれん草のほか、国産有機のポップコーン、鷹の爪(唐辛子)、トマトジュース専用のトマトなどを育てています。
創業当初のメンバーには、農業に関する経験も知識も全くありませんでした。それもあって、冬になると農業の仕事がなくなり、収入が途絶えてしまうことに。そのため、都市部に出稼ぎにいくメンバーがたくさんいました。いわゆる「過疎化」で、地方の若い人たちが都市部に行ってそのまま戻ってこなくなり、 農村から若い人がどんどん減ってしまうのです。
しかし、そういう現状を何とかしたいと思ってこの地にやってきたのに、同じように出稼ぎをしていてはいかんだろう。そういう思いから、冬の間の仕事として、みそ作りを始めました。
できあがったみその名前は、「やさかみそ」。「この地域のみそ」という意味を込めてつけました。地元のおじいちゃん、おばあちゃん達が家庭で作っていた手前みそにならって始めたことが由来です。
現在ではみそ作りに必要な麹から派生して、天然醸造の甘酒や塩麹などの発酵食品も製造し、持続可能な農業と食文化の発信を続けています。
教室では、佐藤さんから、みそについて色々な話をお伺いできました。
一般的に手に入るみそには、大きく4種類あります。
米みそ(米麹+塩+大豆)日本人の約8割が食べる最も一般的なみそ。
麦みそ(麦麹+塩+大豆)麦麹を使っているみそ。
豆みそ(豆麹+塩+大豆)大豆のみで作る、独特の風味のみそ。
調合みそ(複数のみそをブレンド)合わせみそ、柚子みそなど。
みそは塩分濃度によって「甘口(9〜10%)」「辛口(12〜14%)」に分類されます。
麹の割合が多くなるほど、甘みが強くなります。
一番甘いのは「白みそ」。塩分が6%と低く、麹を多く使うため自然な甘さが特徴です。市販の白みその多くは脱色されたり、糖分が添加されたりと、本来の味とは異なることが多いです。もちろん、やさか共同農場の白みそは、脱色や糖分の添加などは一切していません。その代わり、大豆本来の旨味を生かし、麹をたっぷり使って、天然醸造で自然な甘みを引き出しています。これは、雑菌の少ない標高の高い環境だからこそ実現できる製法です。
天然醸造のみそは、冬に仕込んで、春が来て、夏が来て、秋が来て・・・と、みそが生きているので、その間、勝手に発酵していきます。 約10ヶ月から1年くらいの長い時間をかけて、美味しくなるのです。 「時間をかけないで造ることはできません。時間をかけているからこそ、豆の旨味がしっかりします」と佐藤さん。
これに対して、スーパーなどで売られている一般品のみその多くは、速醸法といって、仕込んですぐに50℃から55℃くらいの熱をかけて、1ヶ月間で強制的に発酵させています。 短期間で発酵させるので、天然醸造のような香りはありません。また、発酵の進みすぎを止めるために、アルコールを入れます。そうすると、常温で販売できて、大量に供給できるというメリットはありますが、体に良いと言われるような菌は全て死んでしまいます。やさか共同農場では、生きた菌が作り出す旨みや香りのある「天然醸造」にこだわっています。
教室で使うのは、「かんたんみそセット」。約2kgのみそができます。やさか共同農場では、もともと5㎏や10kgで仕込むことが多かったそうですが、「もっと手軽にみそ作りに取り組んで欲しい」という思いからこのセットを作りました。
材料は、国産の「有機煮大豆」「有機米麹(有機麦麹・玄米麹)」と「塩」のみ。
みそづくりは通常、乾燥大豆を水に浸して茹でるところから始まりますが、「かんたんみそセット」は蒸した状態の煮大豆をお届けします。乾燥大豆だと時間がかかるうえ、水分量を間違えると失敗の原因にもなりますが、煮大豆なら、ちょうど良い塩梅に煮てあるので、手軽で安心です。
麦麹の麦は、全てやさか共同農場で作られた島根県産のものです。米麹の米のみ、島根県産だけでは少し足りないので、秋田県、滋賀県、岡山県、石川県などの有機米を使っています。
そして、大豆はもちろん国産有機大豆です。
大豆の国内自給率はわずか6~7%と言われ、そのほとんどを輸入に頼っています。
国産有機大豆は、国産大豆よりさらに少なく、0.2%しかないと言われており、とても貴重です。
佐藤さんのおすすめは、玄米みそセット。玄米独特の香ばしさや風味を楽しめます。完成品の販売はしておらず、手作りするしかありません。
手前みそは、同じような材料を使っても、全く同じものにはなりません。発酵させる環境や、人それぞれの「常在菌」が個性を生み出します。常在菌とは、仕込む人の手や衣服などにすみついた、その人それぞれにあった菌のことです。
参加者のなかには、みそ作りが初めての方もいらっしゃいましたが、みなさん楽しそう。小さなお子様も一緒に味噌をつぶしたり、味噌玉作りを手伝いました。作業は1時間もかからず、それぞれのご家庭のオリジナルのみそが完成しました。
島根の山奥で有機農業を続けることについて、佐藤さんはこう語ります。
「この貴重な有機大豆や有機のみそを子どもたちに残すために、 僕らは作り続けると決めてるんです。もうやめようかという議論はやめました。もうしない。どうやったら作れるか、どうやったら続けるかという議論をしようというふうにやっています。
皆さんが有機のみそを選んで、みそ教室でみそを作って、有機の大豆を食べてくれるっていうのは、 おいしい、体にいい、環境にいい、もういいことしかないんです。だから、ぜひ続けていただきたい。そして楽しかったら、仲間を増やしていただければと思います。」
みそづくりはとても簡単。ぜひ、「かんたんみそセット」でチャレンジしてください。
そして、島根の山奥で有機農業を続ける、やさか共同農場の皆さんを応援しましょう!
皆さんの手前みそ作りの様子をインスタグラムに投稿してください。
「思ったよりカンタンだった」、「初めてでも上手にできた」、そんな楽しい投稿やコメントをお待ちしています。