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オーガニックの基礎知識を学ぼう

オーガニック野菜はどのように栽培され、収穫され、私たちの手元に届くのか?有機栽培に取り組む農家の知恵や工夫、有機認証制の仕組みなど、オーガニックや有機JAS制度の仕組みについてわかりやすく解説します。

信頼できるオーガニック商品の見分け方

私たちの暮らしの中で、有機野菜をはじめとし、たくさんのオーガニック食品を街でみかけることが増えてきました。しかしながら、「オーガニック」という言葉が一般化している一方で、その基準や内容についての理解が十分でないこともあります。
ここでは、日本農林水産規格の有機JAS法に基づいた信頼できるオーガニック商品の見分け方を解説します。

有機農業を知る

一般的な農業では、害虫対策や除草のために化学肥料や合成農薬が使用されますが、有機農業ではこれらの化学物質に頼らず農産物を生産します。
日本では1970年代から有機農業運動が始まり、2001年には有機JAS法が施行され、有機認証を受けなければ「有機」や「オーガニック」と表示して販売できなくなりました。

有機JASマーク

太陽、雲、植物をイメージしたマークで、商品が有機JASの基準に従って生産・管理されたことを証明しています。
法律で有機JAS認証を取得していない農産物や農産物加工食品に「有機」や「オーガニック」と表示することは禁止されています。

1.オーガニック栽培の準備

オーガニックの畑として認定されるためには、周囲の環境をチェックし、畑の周りに工場がある場合に汚染の恐れがないか、また農薬を使用している周りの畑から農薬が飛んでくる心配がないか、農薬の飛散を避けるために十分な間隔があるかどうかを確認しなければなりません。他にも、化学肥料や農薬を使用していた畑は、最低3年間は休ませる必要があります。

2.おいしい野菜作りの基本は土づくり

おいしい野菜作りの理想の土は、山の腐葉土です。土から木が育ち、葉や枝が地面に落ちて分解されて肥料となります。この自然のサイクルを再現するために畑で育った野菜の葉やつる、茎をはじめ、落ち葉、樹皮(バーク)、おがくず、もみ殻、家畜の糞や油粕などを土にすきこみます。そうすることで、土に空気が入り、微生物に分解され、ふかふかのベットの様な土ができあがります。また、小さな種や苗に、遺伝子組み換え技術を用いていないことや化学的に合成された物質が付着していないことも大切です。すべての農業の原点にある「土づくり」。健康な土づくりができてこそ、農薬も化学肥料も必要がない有機農業を続けることができるのです。

野菜を収穫した後の畑に緑肥作物を植えて、畑を半年ほど休ませます。育てた緑肥を土にすき混むことで、余分な栄養分を吸収したり酸素を土に取り入れるなどの効果があります。これも大切な土づくりのひとつです。

3.自然に寄り添う知恵や工夫

有機農業では、農薬や化学肥料に頼らず作物を育てるためにさまざまな知恵や工夫をこらしています。

耕種的防除(土づくりや、栽培品目を変えて作物を植える方法)

適地適作と適期適作

有機農業の基本になりますが、その野菜が最も自然に育つ時期(季節の旬)と場所を選び、じっくり、ゆっくりつくります。自分たちの欲しいものを中心に考えていてはダメ。本来は、冬場になすやきゅうりなどは収穫できないのです。季節の旬に私たちも合わせて行くことが大切です。

輪作

毎年、毎回、同じ場所に同じ作物を植えると、何らかの病気が発生する確率が高いことから(連作障害)、土中のバランスを健全に保つために、同じ畑で同じ作物を続けて作らない工夫をしています。野菜を栽培した後には、大豆・菜種・麦などを植えています。

緑肥

収穫後の畑に、燕麦、小麦、とうもろこし、レンゲソウ、クローバーなどの緑肥作物を植えて、畑を半年ほど休ませます。生育した緑肥作物を刈り取り細かく砕き土にすき混むことで、土の中の余分な栄養分を吸収したり酸素を土に取り入れるなどの効果があります。

物理的防除(熱、光、囲いなどを利用した物理的な手段により虫害や病気を防ぐ方法)

マルチシート

黒マルチは、光を通さないので雑草が生えるのを防ぐことができます。また、地面の温度が上がるのを抑える効果などもあります。その他、透明マルチは地温が低い時に利用したり、銀色のフィルムで光を反射するシルバーマルチで害虫を遠ざけるなどの使い分けをしています。もちろん、わらや刈草等の有機物を利用したものもあり、土の乾燥を防いだり、雑草を抑える効果があります。

防虫ネット

小さな虫も通れないような網目のネットをかける方法です。

トンネルやべた掛け

半円形の支柱を立て、ネットをかぶせたり、通気性や浸透性のある不織布などを野菜の上に直接かぶせることで、虫などから作物を守る方法です。

草むしり

こまめな草むしりも大切です。有機JAS法では、除草剤なども使うことは禁止されている為、農家さんたちは一生懸命、手で草むしりをしています。

生物的防除(天敵となる虫や、相性の良い植物を植えて虫害や病気を防ぐ方法)

天敵

テントウムシ、カマキリ、アマガエル、ハチ、クモなど、農産物に害を及ぼす害虫(アブラムシやイナゴなど)を主食としている生き物の力を借ります。もちろん、生態系のバランスを崩さないことが大切です。

テントウムシ

ナナホシテントウは、幼虫、成虫ともにアブラムシを食べる益虫として有名です。テントウムシのいる畑は良い畑だと言えることから、有機農業のシンボルにもなっています。

カマキリ

昆虫界のハンターと呼ばれているカマキリ。小さなうちはアブラムシを食べてくれたりしますが、大きくなると自分の体よりも大きな昆虫や、ヘビやカエルなどの益虫までもを捕らえ、頭からむしゃむしゃと食べてしまうこともあるのです。

アマガエル

畑の番人、アマガエルは肉食性の生き物。視力が良く、動いているものや小さな虫までどんどん捕らえてくれます。害虫駆除には欠かせない存在です。

バンカープランツ

農作物を守るための天敵を、圃場内に定着させておくための植物を植えます。おとり植物といった感じです。

バンカープランツ(麦、ソルゴー、クローバー、よもぎ、コスモスなど)

写真の左側はなす、右側ににソルゴーという植物を植えています。収穫後は、ソルゴーを砕き土の中にすきこみます。土にすきこまれたソルゴーは、土の中の余分な栄養素を分解し土の状態を良くしてくれます。

コンパニオンプランツ(マリーゴールド、バジル、ナスタチウム、ミントなど)

育てたい野菜や花のそばに植えることでよい影響をもたらす植物や組み合わせのことをいいます。ハーブ類や豆類、ネギやセロリなど、相性の良い組み合わせのものを植えます。

化学的防除(上記の防除方法では対処できない場合にのみ、天然物由来の成分の農薬を使い虫害を防ぐ方法※有機JAS規格)

除虫菊乳剤、ピレトリン乳剤、なたね油乳剤、大豆レシチン、マシン油、フェロモントラップなど

フェロモントラップ

これは、メスの匂いのするフェロモン剤を使いオスをおびき寄せ容器の中に閉じ込めるというものです。オスが死んでしまうとメスは交尾ができないので、卵を産むことができません。すこし残酷のような気もしますが、大切な野菜を食い尽くしてしまう幼虫の発生を防ぐ手段として使われる場合があります。(写真は、サニーレタスなどの畑の様子です)

4.収穫、そして出荷へ

じっくり、ゆっくりと時間と手間をかけて育てられた有機野菜は、ようやく収穫の時を迎えます。葉ものの野菜は傷をつけないよう丁寧に、根元から優しく抜き取ります。ビオ・マルシェの契約農家では、野菜についている泥も洗い落としてくれています。収穫、輸送、選別調整、洗浄、貯蔵、包装その他の収穫以後の工程にまつわる管理も、すべて有機JASの基準を守り、洗浄剤、消毒剤、その他の物に汚染されないよう出荷をします。出荷や輸送中に「有機」のものと「非有機」のものに分けられています。

5.お届け方法も有機JAS基準です

ビオ・マルシェは「有機食品の小分け認証認定事業者」として登録をされています。 小分けとは、例えば大きな段ボールで届いた農産物を、小袋詰めにして、その袋に有機JASマークを貼り直すことです。

そのときに、有機食品と、その他の食品が混ざらないように管理できること。
禁止されている薬剤によって汚染されないよう保管、袋詰めなどの作業ができること。
などが適切に管理できる体制が整っていると認められなければ、小分け作業はできないことになっています。作業場で使う洗浄剤、倉庫や作業場での害虫やネズミなどの対策にも禁止された薬剤は使用できません。

また、小さな農家さんだとこのような作業がとても負担となるため、それを手助けするということにもなります。このように、畑や工場など有機の食べ物がつくられる現場から、皆さんの手元に届くまで、ずっと有機の基準が守られています。

さいごに

土づくりからはじまり、天候に左右されつつ、害虫や病気、環境の変化にも耐えて無事に収穫を迎えることのできる野菜は全体の6割から7割ほどだといわれる有機農産物。慣行農業のように、一度にたくさんの量を植えることもできないので、手間ひまがかかり、同じ面積からとれる収量は、さらに少量となります。
だからこそ、公正な取引をすることや、どんな時も私たちが支え続けることが本当に大切です。

いかがでしたか?みなさまの食卓に届いた有機野菜がどのような旅をしてきたか、想像していただけましたか?
つぎに有機野菜や食品を手に取った時は、少しでも有機JASの話を思い出していただけると嬉しいです。また、オーガニックについてお友達と話をしてみたり、家庭菜園にチャレンジしてみる、畑を訪れることで、より身近にオーガニックを理解し、その価値を感じることができるでしょう。

できることからはじめてみる。つづける。気が付いたら「オーガニックが暮らしの真ん中に根付いていた」というのが、私たちの理想です。